てきすとぽい
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第三回 てきすとぽい杯
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といかけ
(
さきは
)
投稿時刻 : 2013.03.16 23:30
字数 : 1123
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といかけ
さきは
「けいこうとなれどぎ
ゅ
うごとなることなかれ」
そんなことを、どこかの誰かが言
っ
たという。
「その論理で言えば、だ」
買い物かごをさげて俺の前に立つ友人が、ぼんやりと、何も無い空間を見つめた。やがて、友人の目は焦点を結び、ゆ
っ
くりと視線
をおろす。そして、正面から俺を見据えてきた。
「し
っ
ぽのない牛の後を歩くことは可能か」
「可能だろ。それより、その問いを設定する意味がわからん」
「では、そもそもし
っ
ぽとは何か」
「もふ
っ
とするためのものだろ」
「いや。し
っ
ぽとは、バランスをとるためのものだ」
ものすごく真剣な顔がこちらに向けられていた。友人は続ける。
「均衡を保てぬものの後を歩くことはできない。なぜなら、まともに歩めずにこけるからな」
まともに聞いているのも馬鹿らしくな
っ
たので、俺問いを投げてみた。
「じ
ゃ
あ、し
っ
ぽのない牛がいたら、おまえはどうするんだ?」
「盛大な焼肉パー
テ
ィ
ー
を開催しておいしくいただく。それはもうありがたく」
「おまえ、呼ぶほど知り合いいないだろ」
「では、逆に聞くが。尾のない鶏の前を歩くことは可能か」
「その問いに、何か意味が?」
「し
っ
ぽがなくとも、とりあえず、その牛は道をつく
っ
てくれている。歩みにくいかもしれないが。ふらふらした鶏の前を歩くよりは、足取りのおぼつかない鶏を気に掛けながら進むよりは、歩きやすいのかもしれないな。ならば、ふらふらしたものであ
っ
ても、前にいないよりはましか? その牛にし
っ
ぽがあれば大歓迎?」
俺は顔をしかめた。
「おまえ、性格わるいな」
友人は口の端をもちあげた。
「心に刺さるのであれば事実なのだろうよ。認めたらどうだ、誰かにく
っ
ついていく方が向いている、と」
「認めるさ。だがな!」
俺は声をあららげ、手にしたロー
ズの香りと書いてあるビニー
ルパ
ッ
クを友人につきつけた。
「どうして俺がお買い得柔軟剤現在増量中高級感あふるるフロー
ラルな薔薇の香りを手に主婦に混ざ
っ
てレジの長蛇の列に並ばねばならんのだ!」
「追従するのが好きなのだろう?」
「はなしをすりかえるな」
「すべては俺がひとりぐらしだからだ。対しておまえは実家暮らしだ。俺の生活費を浮かせる手伝いをしろと、ここに来るまで何度も言
っ
たじ
ゃ
ないか。大学生が単位とりつつバイトで生きていくのは大変なんだぞ。そこのところは了承済みじ
ゃ
なか
っ
たのか?」
「知るか」
「人助けだ」
「どこが」
「とりあえず崇めてやる」
「拝むな恥ずかしい!」
く
っ
てかか
っ
てみるも、友人は至極冷静だ
っ
た。
そこに、おそるおそるとい
っ
た調子の声が、かけられた。
「あのー
」
俺と友人の目が、同時に、声の主に移る。
周囲の奥様方の視線を集めていた俺達に、スー
パー
のレジの店員さんが、お会計の順番が回
っ
てきたことを告げた。
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