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第三回 てきすとぽい杯
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真実と動機
ウツミ
 投稿時刻 : 2013.03.16 23:30 最終更新 : 2013.03.16 23:48
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- 2013.03.16 23:39:24
- 2013.03.16 23:30:52
真実と動機
ウツミ


 逃げても、逃げても、わたしには逃げ場所などどこにも無かた。
……なお、警察は殺人事件と見て調査を進めており、重要参考人として、現在行方が分からなくなている……
 街頭に置かれたテレビから、ニスキスターの声が響く。
 ――……まただ。
 思わず唇をぎと噛みしめる。
 ――ぱりここも駄目だた。
 テレビの音声を振り切るように歩み去るわたしの耳に、今度は周囲の人の話し声が届く。
「やだ、この街で殺人事件ですて!」
「おいおい……。人殺しがこの街にいるとか、勘弁してくれよ……
「人殺しなんか、ととと死刑にしちまえばいいんだよ!」
「そうそう! 刑が軽いから人殺そうて言う連中が後を絶たないんだよ!」
 ――うるさい。うるさい!
 人気のない通りを早足に進みながら、わたしはギと手を握り締めた。
 ――あなたたちに何が分かるていうの!? ただニスを聞いただけの連中に!
 悔しかた。
 少し前までは、わたしだて彼らと同じだたはずなのに。
 殺人は重い罪。それを犯した者は厳しく罰せられるべき。
 そう、考えていたはずなのに。
 ――どうして、こんなことに……
 わたしは過去を振り返る。

 その時まで、わたしは何も悪いことなどしていない筈だた。
 それとも、騙されたことは悪なのだろうか?
 最悪の相手に出会てしまた事は、責められるべきなんだろうか?
 分からない。ただ、分かている事は一つだけ。
 アイツは、最低のクズだた。
 ほんの一欠片の悪意で誰かを破滅に追いやることを生業としていた、クズ中のクズだた。
 アイツに目を付けられたわたしに残されていた道は――破滅だけだた。
 それでもわたしは奴の不正を警察に訴えるべく、証拠を掴もうとした。
 だがしかし、奴にとて生業だたからこそ、都合の悪い証拠は徹底的に隠されていた。
 だから、それ以外に方法は無かたのだ。
 ――アイツが生きている限り、わたしは幸せにはなれない……
 だから、殺したのだ。
 徹底的に。
 容赦なく。
 これで、幸せになれると信じて。
 ……だがしかし。

 わたしは人目を避けて裏路地を歩いていた。
 電灯さえまばらな、薄暗い通り。
 今、マスコミの報道はアイツが善良な市民であたかのように報じられていた。
 ――どうして……
 結局、警察やマスコミも未だに奴の不正の尻尾すら掴めてはいないのだ。
 それだけ奴が狡猾だた、とも言えるだろう。
 無論、もうしばらくすれば警察もアイツがどんな人間だたか気付くはずだ。
 だが……
「な、この街で起こた例の殺人事件、まだ犯人捕まてないらしいぞ」
「警察は何してんだよ……
「あの重要参考人が殺したんだろ? とと捕まてくれないかね……
 悪意なき野次馬たちは、警察がアイツの不正の証拠を掴めていないことではなく、未だにわたしを捕まえていないことを責める。
 ――、どうして……? どうしてわたしが追われなくちいけないの……
 無力感が胸に満ちる。
 一体、誰が悪いのだろうか?
 アイツなのか? それともアイツを殺したわたしなのだろうか?
 真実を掴みきれない警察やマスコミ? あるいは無根拠な噂で人を貶める野次馬たち?
 本当のところは分からない。
 だけど、これだけは言える。
 ――誰も、わたしを助けてはくれなか……
 その思いが胸に溢れ、嗚咽となて口から洩れる。
 ――結局、こうなるまで誰も助けてはくれなか……。なのに、わたしが責められるの……
 どうして。
 わたしはただ……
 ――幸せでいたかただけなのに……
 その時、わたしの背後で足音が響いた。
「ちと、そこの君!」
 振り返ると、警官が二人、道を塞ぐように立ていた。
 ――ああ……。これでもう、逃げられない。
 その時わたしの胸に宿たのは、諦めだたのか、安らぎだたのか。
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