てきすと怪2014
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貪狼巨門禄存文曲廉貞武曲破軍
茶屋
投稿時刻 : 2014.08.16 11:22
字数 : 2432
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貪狼巨門禄存文曲廉貞武曲破軍
茶屋


 これはMさんから聞いた話だ。
 かと言てMさんの体験した話ではない。MさんもSさんに聞いた話であるがと前置きしたし、SさんもこれはNさんに聞いた話であるのだけれどもと前置きしたらしい。おそらくNさんもIさん辺りに聞いた話であろうし、かと言て話の大元はIさんというわけでもなく、やはり誰かから誰かに聞いた話を聞いたのではあるまいかと推測される。
 又聞きの又聞きの又聞きのその又又聞きで又々又聞きな又聞きの話しであることは予め承知していただきたい。
 信憑性定かならぬ話だが、この話に出てくる二三のものは一応事件として記事にもなたらしいと聞いているし、本気で調べる気にならばやはり実在しているのかも知れぬ。けれどもそんなものいちいち調べる気にはなれないので、ま、話半分に聞いていただくのが良いかもしれない。本気にすれば巻き込まれてしまうかもしれないという噂もあるらしいのであるから。

 さて一連の出来事はある自殺事件から始また。
 ある三十代の女性が倉庫で首を吊て死んでいるのが見つかた。他殺の可能性は低く、自殺として処理された。
 また、ある男性が多量の睡眠薬を飲んで入水自殺した事件もあた。一時他殺の可能性も考えられたが、やはり自殺であろうということで終わた。
 そして、また別の男性の自殺したいも発見される。
 こんな風に立て続けに自殺死体が発見されたわけだが、日本の年間の自殺者数は年間約三万人。単純に考えても一日八十人以上は自殺しているわけだから取り立てて珍しい訳でもなく、警察としてはなんだまたかといた具合だたかもしれない。
 そんなわけで自殺はただの自殺として処理される事になるかと思われた。
 けれども一人の刑事が三人の自殺者の共通点を発見したのだ。
 三人は印の付いている地図か、GPSを持ていたということ。
 理由は不明だが、ある「特定の場所」で自殺を実行したのではないかと刑事は推理した。ところがその「特定の場所」というのがどういう場所なのかよくわからない。
 何か過去の事件のあた場所でもない。何か意味のある場所とも思えない。
 刑事は悩みながらも、自殺者三人の接点を追た。
 すると三人は同じ宗教団体に所属していたことがわかた。
 名前は伏すが、あまり有名な団体でもなく、公安部にマークされるような危険性も見られていない。
 ところが調べてみるとその宗教団体に属する人間が他にも三人同じ時期に自殺していたことが判明した。
 合計六人。遺書もなく、明確な意図もわからぬ自殺をしているのである。
 しかももう一人、その宗教団体に所属するもので自殺未遂で入院しているものがあるという。
 同じ宗教団体に属するものが七人。同じ時期に自殺を図たのである。
 どんな意味かは不明だが、そこに何かしらの宗教上の理由があることは間違いない。
 そこで警察は本格的に捜査に乗り出し、教祖の男を自殺教唆の疑いで逮捕することとなた。
 だが、逮捕の直前、男は逃走し、自殺を図た。瀕死の状態で見つかた教祖は病院に搬送されたが、間もなく病院で息を引き取た。

「結局どういうことなんですか?」という私の問に、Mさんは肩をすくめ、
「今までのところは実際に起きた事件の話なんですが、ここからは憶測といいますか、噂話の類になてしまうんですがね」と前置きをしながら話し始める。

 教祖が自殺した場所は、自殺未遂に終わた信者が自殺を図た場所だた。
 つまり、やはり自殺は場所に意味があるということだ。
 そこで刑事は改めて地図に自殺者の死んだ場所に印をつけてみる。
 まるでばらばらのようでもあり、特段何かの図形が浮かび上がてくるようには見えなかた。
 だが、よくよく見てみるとそれはある星座の形をとていたのである。
 そしてそれぞれの自殺者の特徴と星座の星星に関する道教神話を照らしあわせてみるといくらか符合する点がある。
 これは何かの儀式だ、そう刑事は推理した。
 各星座の星に見立てた自殺者の死によて何かしらの宗教儀式を成立させようとしていたのだ。
 宗教団体の施設を捜査していく内にそれを裏付ける資料が続々と見つかてくる。
 やはり一連の連続自殺は星座に見立てを行たある種の儀式による集団自殺であろうという見解に刑事は達した。

「それは呪いだたんですか?」
 という私の質問に対してMさんは
「呪いといえば呪いですが、悪い意味での呪いではありません。彼らは右翼系の宗教団体だたようで、今の国家を憂い、日本をより良くするための祈祷、呪法を行たのです」
 なんだ、と思て私は少し安心する。人が死んでいるとはいえ、他人には害のないものだ。けれどもMさんの表情はどこか安心感を持ていない。
「けれども、結構危険な呪法らしいんですよ。失敗すれば逆に災いをなすような類の。そして関わた人間をそれこそ悪い意味で呪てしまうような暴走を始めてしまう。それだけに効果は大きいらしいんですけど」
「でも、儀式は成功したんでし? 一人が自殺未遂に終わてるけど、結局それを補た形で教祖が自殺している」
 けれどもMさんの表情は曇たままだ。
「そう。そうだといいんですけどね。でも、教祖が死んだのは……
 そこでMさんは口を噤んでしまた。
 教祖が死んだのは?
 一体どういうことだろう。
 そんな風に考えているとMさんは言うべきか言わないべきか迷た様子で、
「事件を調べていた刑事は死んだらしいんですよ」
 
 儀式は完成したはずなのに、何故刑事は死んでしまたのか。
 単なる偶然か?
 それとも儀式は完成しておらず、呪いが暴走してしまたのだろうか?
 教祖が死んだのは……
 そう、教祖が死んだ場所は、自殺未遂者が自殺しようとした場所ではなく、搬送された病院だ。
 場所はずれてしまたのだ。
 刑事は、それに気づいて、その穴埋めをするために自殺をしたのか。
 けれどもMさんは刑事は死んだと言ただけで、自殺したとは言ていない。
 だとしたら、呪いはまだ続いているのだろうか。

 その後、Mさんとは連絡が取れない。
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