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てきすと怪2014
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怪というには怪ではないし日常というには日常ではない
 投稿時刻 : 2014.09.13 04:18 最終更新 : 2014.09.13 04:30
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- 2014.09.13 04:30:52
- 2014.09.13 04:27:25
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- 2014.09.13 04:18:59
怪というには怪ではないし日常というには日常ではない
たこ(酢漬け)


「最近家で変な現象が起きるんだよ」
 そう口にしながら鮟鱇は定食の乗たお盆をテーブルの上に置きながら、椅子へと腰かけた。
 場所は大学の学生食堂。鮟鱇が陣取た席の正面には既に天魚が座ていて、うどんをすすている。
「ん、なんて?」
 どうやらうどんをすするのに必死で鮟鱇の言葉が聞こえなかたようだ。それに食堂が込み合ていて、騒がしい。
「だから、家で怪奇現象が起きるて」
 天魚はその言葉を聞いて怪訝そうな表情をした。確かにいかにも信じがたい話である。鮟鱇だて信じたくはないと内心思ていた。
「そんなことは気の持ちようでどうにかなるものだよ鮟鱇君。私には何とも言えないね」
「気の持ちようて・・・」
 そんなことは鮟鱇も分かているはずだた。だが問題の怪奇現象はかれこれ一週間も続いている。気の持ちようで解決できれば、今さらこんな話を切り出さないだろう。
「冷めてしまうぞ」
 天魚に指摘されて、鮟鱇は目の前に置いてある定食に手を付け始めた。
「あれ、何してんの?」
 二人が黙々と食べていると、一人の男子学生が声を掛けてきた。見ると、それは見たことのある姿だた。
「二人でデートかい?」
 そう言て二人の隣の席に腰かけてきたのは擂粉木だた。ちなみにこの三人は皆同じ学部である。何かの縁かは分からないが、入学当初からいにいることになた三人である。
「そんなことはない。鮟鱇が腑抜けた相談を私にしているだけだ」
「腑抜けたて、お前・・・」
 鮟鱇は割と真剣に怖がていたのに、天魚に真面目に相手にされずシクを受けていた。擂粉木はそんな二人の様子を見て笑ていた。
「で、その腑抜けた相談てなんなの?」
 擂粉木はまだ笑いを噛みしめた顔をしている。
「そうだ擂粉木。お前も聞いてやれ」
 そう言て天魚がいらぬ茶々を入れた。
「えと、だから、最近自分の部屋で怪奇現象が起きるて」
 鮟鱇の言葉に擂粉木は信じられないという顔をした。
「え、なに?夢でも見たの?」
 確かに夢であればどんなに楽な事か。鮟鱇は自分の言ていることが信じてもらえないことに少し憤りを感じた。
「それなら、今度うちに来てみるか?」
「今度?今日でもいいよ?面白そうだし」
「今、この後てこと?」
 鮟鱇は確認した。
「そうだよ」
 擂粉木は即答した。顔はにんまり笑ていた。なかなかの快諾だた。さきは鮟鱇の話を笑い飛ばしたくせに、なんだか家に来るなんて、鮟鱇は擂粉木に皮肉を行て見たくなた。
「擂粉木は信じてないくせにうちに来たいのか?」
 鮟鱇はちと皮肉交じりに言てみた。あくまで本人の「込めたつもり」であるが
「別にそう言う話嫌いてわけじないし、お泊りするのは面白いからね」
 そう言て擂粉木はさわやかに言た。それから天魚の方を向いて「天魚も来るよね?」と確認した。
 天魚は口に頬張たうどんを咀嚼し終えてから言た。
「私は別にかまわんぞ。ただ、うどんを食べ終わるのを待ていてくれないか」
 天魚の方を見ると、まだどんぶりの中にうどんが残ていた。天魚は子どもの様にちまちまとうどんを食べていて、まだまだ食べ終わりそうにない。
「うどん食べるのにどんだけ時間かけてるんだ」
 それから、鮟鱇も擂粉木もあきれた表情で天魚がうどんを食べ終えるのを見守ていた。
 閑話休題。
 三十分後。
 結局それから三十分もかかた。鮟鱇は天魚の食べているうどんが伸びないか気になて気が気ではなかたが、当の天魚はそちらよりも出汁がぬるくなたことが不満だたようだ。
「なら早く食べればいいのに」
「いいのだよ。君は人の趣味嗜好に口出しするのかい?」
 うどんの食べ方が趣味嗜好・・・。鮟鱇は天魚の有無を言わさぬ言いぶりに何とも言えぬ徒労感を覚えた。
 そして今は鮟鱇と擂粉木と天魚の三人で、鮟鱇のアパートへと向かている。
 手には何故かコンビニ袋。その中には缶ビールや缶チハイ。それにつまみがいくつか入ている。
「なんで酒盛りなんかするんだよ」
 自分のテリトリである自分の部屋が何だか荒らされるような気がして、鮟鱇は愚痴をこぼした。
「君の言う「出る時間」までまだ時間があるじないか。それまで何をして過ごすんだい?」
 天魚は分かてないなとでも言うかのように鮟鱇にそう返した。こいつは飲むからな、と鮟鱇は内心警戒した。
 擂粉木はそんな二人の様子を眺めながら、朗らかに笑ている。擂粉木が一番大きなビニール袋を持たされているのにそんなことどこ吹く風と言たような風情だた。
 そんなこんなで鮟鱇の住むアパートに到着した。鮟鱇の部屋は二階の角にある。三人は鉄骨製の階段を上て鮟鱇の住む部屋の前へと到着した。
 鮟鱇はポケトから鍵を取り出し、鍵穴に突き刺した。鍵を回すと、カチリと無機質な音がして、ドアのロクが外れた。
 そうして、三人は鮟鱇の住まう部屋の中へと入た。
「狭いなここは」
 ワンルームのアパートらしく、三人が玄関に立つと、そこはもうぎうぎう詰めだた。
 鮟鱇は急いで靴を脱いで、二人のためになるだけスペースを用意しようとした。
 玄関から入たすぐそこはキチンになていた。どこにでもあるワンルームマンシンの間取りである。
 奥の方に擦りガラスのついたドアがあり、そこからがメインの居住スペースとなているようであた。
「ふむ。案外きれいにしているのだな」
「男なのに小奇麗にしてるんだね」
 天魚も擂粉木も鮟鱇の部屋が意外にも整理整頓されていることに驚いていた。
「悪かたな。小奇麗で」
「ほめているのだよ」
 悪態をつく鮟鱇に対して、天魚がほめ言葉を口にした。
 その言葉を聞いてどう反応しようか決めあぐねている鮟鱇を尻目に二人は部屋の奥へと上がて行た。
 そうしてささと酒盛りの準備を始めてしまた。
 鮟鱇は仕方がないので、酒のつまみにと思い冷蔵庫の中から昨日スーパーで買てきた魚の切り身を取り出した。
 再び閑話休題。
 それからというもの、三人はひたすらに酒を飲み続けることになた。既に部屋の脇には空になた空き缶が積み上げられている。
「・・・それでさ、やぱ鮟鱇はモテると思うんだよ」
 得意の優男面をさらににやけさせながら擂粉木が言た。
「いやでも、そんなモテた経験なんて一度もないぞ」
「またまた。この前だて女子と話してたじん」
「いや、あれは授業で分からないところを聞かれてただけでな・・・それきりだ」
「いや、そう言うところから恋が生まれたりするんだよ」
 擂粉木はなんだかわかたような顔をして頷いていた。
「天魚だて鮟鱇の事が好きて噂あるしな」
 そう言て擂粉木は天魚の肩をぽんと叩いた。なれなれしいスキンシプに天魚は嫌な顔をした。
「いや、私は何とも思ていないぞ。それよりも鮟鱇はその質問してきた女子と仲を深めるがいい」
 さきから黙て酒を飲み続けていた天魚の反応は素気ないものだた。
「いや、この前話したのが初めてなのに・・!?」
 鮟鱇の嘆きも空しく天魚は再び酒を飲み始めた。新しい缶に手を付け、プルタブを起こすと、プシと小気味良い音がした。
 そして、それと同時に、蛍光灯が点滅し、床が揺れたように感じられた。
「天魚、何かしたの?」
 擂粉木は驚きを隠せないようで、あわてて天魚に聞いた。
「するわけがないだろう」
 対照的に、天魚は落ち着いた様子で、さき開けた缶に口をつけて酒を一口飲んだ。
 だが、その眼はまるで獲物を見据える鷹のように鋭い目つきになていた。
 鮟鱇はそんな二人の光景を眺めながらため息をついた。そうして次のように口にした。
「これだよ。例の」
「何、もう始またのか!?」
 天魚は弾かれるように鮟鱇の方に視線を向けた。天魚の視線を受けて鮟鱇は頷いた。
 時計を見ると、日付が変わる午前零時を一分過ぎたところだた。
 そして、時計の針がまた一ミリほど動いたところで、再び電灯が点滅し、ラプ音が鳴り始めた。
 ラプ音は部屋のいたるところから聞こえてきて、時に蛇の鳴き声のようなものも混じていた。
「怖、何これ」
 擂粉木は驚いた様子だた。「ていうかマジだたんだね」としきりに繰り返していた。
「ちと、電灯を消してくれないか」
 天魚は驚く擂粉木を無視して鮟鱇に指示と出した。
 毎度のことで慣れている鮟鱇はともかく、天魚がものすごく冷静なことに鮟鱇は驚いた。
 鮟鱇が電灯を消すと、電灯の点滅は消えたが、ラプ音だけが残た。電灯がチカチカして煩わしかたので、これはこれでまずまずだと鮟鱇は考えた。
 電気を消すと、天魚が周囲を見渡し始めた。何をしているのだろうと鮟鱇は不思議に思い、彼女の行動を観察していると、天魚はふと視線を一か所に留め、そちらの方へ近づいて言た。
 天魚が近づいて行たのは、物干しざおの方である。それは鮟鱇が近くのホームセンターで買てきたもので、室内で洗濯物を干すために使ているものだ。今も洗濯物が掛かている。
 天魚は洗濯バサミで吊るされたパンツやタオルやハンガーに掛けられた衣類をかき分け、その中から異変を見つけ出した。
「原因はこれだよ。鮟鱇」
 天魚は干されたパンツを手でかき分けながら、その空間を鮟鱇と擂粉木の二人に見せた。
 そこには禍々しい紫の光を発しながら、空間に裂け目が生じていて、その裂け目には眼球が覗いていた。
 その眼球はどこか血走ていて、狂気に侵された人間の物を思わせた。ぎろぎろとこちらの方を見回しながら、嫌な雰囲気をこちらに送てくる。
「うわわわ」
「な、なんだこれ」
 鮟鱇と擂粉木の二人はその光景をみて恐れおののいた。
「いや、マジ?」
 擂粉木はその眼で見たものが確かであるか分からず、ひたすら目をこすては、空間に生まれた軋みと眼球を眺めていた。
「何これ、どうすんの?」
 慌てる鮟鱇を尻目に天魚は冷静だた。
「なに。簡単だ」
 そう言うと、天魚は洗濯物を持ていない方の手で印を結び始めた。片手で結ぶ印だたけれど上手なものだた。鮟鱇はそれを見て修験の類か何かかと思い至た。
 天魚は印を結んでから、掌を眼球の方に向けると、その禍々しい紫の光と雰囲気は徐々に落ち着いて行き、眼球はまるで眠りに落ちるかのように閉じて行た。
 眼球が閉じきるまで天魚は掌をそちらの方に向けていた。そして目が閉じられ空間のきしみも無くなると鮟鱇の部屋はいつもの通りに戻てしまた。
 鮟鱇と擂粉木の二人はその光景をあけにとられて見ていた。
「な、何だたんだ?」
「うむ・・・」
 疑問に苦しむ二人を余所にしながら天魚は物干しざおの形態を少しだけ変更させた。
 それは、
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  というような形だたのが、
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 という形に変えられただけだたのだけれど・・・・。
「何なの?これ」
「原因が聞きたいのか?」
「うん」
「うむ。なら話してやろう」
「怪奇現象の原因はな、この物干しざおだたのだよ」
「え、これが?」
「あ。一見何の変哲のない物干しざおなのだがな、この形がやばいのだ。これ、鳥居の形をしておただろ?」
「それが何か問題あんの?」
「うむ。鳥居はな、ま色々意味があるかもしれないが簡単に言えばこの世とあの世をつなぐゲートみたいなもんじ。今回は偶然にも物干しざおが鳥居の形になたことで意図せずあの世とこの世をつなぐ媒介になてしまたようだのう」
「そんなことが、俺の部屋で・・・」
 予想外の話の大きさに鮟鱇はため息を漏らした。
「あ。偶然にも君の部屋でな」
 そう言て天魚は鮟鱇を元気づけるかのように肩をポンポンと叩いた。
「ま。私が封印してやたから気にするな」
 むしろ天魚はそんなことができたのか。そのことに鮟鱇は驚いた。
「そんなことより私はもう疲れてしまたよ。ベド借りるからな」
 そう言て天魚は鮟鱇の部屋のベドに倒れこんだ。
 天魚はすぐに寝息をたてはじめ、鮟鱇と擂粉木の二人はその日は床で寝ることになた。
「仕方ないね」
「ま、そうだな」
 そう言て、鮟鱇は天魚の肩まで毛布を掛けてやた。天魚は寝言で何かむにむにていたが、うまく聞き取れなかた。
 鮟鱇と擂粉木の二人はベドにもたれかかてそれぞれ毛布をかぶた。
 それ以降、鮟鱇の部屋でポルタ―ガイストが起きることはなくなた。鮟鱇は天魚に感謝の品を贈ろうかと言たが、天魚はいらないと断た。相変わらず飄々とした人物である。
 あの時の天魚の力は一体なんだたのだろうか。おそらく霊能力というものなのだろうが、天魚の事を良く知らないため、何とも鮟鱇には判断しがたい。
 とはいえ、鮟鱇が天魚に興味を持つきかけにもなたのがこの事件である。事件というにはあまりにも小規模かもしれないがそれでも事件である。
 そうして鮟鱇と天魚と擂粉木の三人が食堂で怪しげな話を交換し合うという日々が続くようになていくのであた。
 今日もまた、学生食堂で怪談噺に花が咲く。
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