てきすと怪2014
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だれにしようかな
投稿時刻 : 2014.09.15 00:01
字数 : 1396
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だれにしようかな
伝説の企画屋しゃん


 午後の仕込みを終えると、厨房の外に出て煙草を口にくわえた。
 夏が終わり、伊豆の海も徐々に落ち着きを取り戻しつつある。
 しかし、本当のレジシーズンはこれからだ。すごしやすく、味覚を売りにできる季節のほうが温泉旅館は忙しない。
 私が料理長となて、はじめての秋。夏を乗り切た安堵感以上に、不安が大きくのしかかる。
 改めて実感するのは、前の料理長だた岩さんの存在感だ。勝手口のある中庭からは、垣根越しの駿河湾。女将は、あの波間から岩さんが旅館を見守ているというが、果たしてそうだろうか。

「おい、平八。お前、まさかまだ小説なんぞ書いているんじねえだろうな」
 生前、岩さんはしばしば私をそのように叱責した。
 包丁裁きに繊細さが求められる反動だろうか、たいていの料理人は気が荒い。叱責がやがて罵倒へと転じることも常だた。
「のろい! お前の仕事はのろい!」
 手際の悪さを、料理に専念していないからだと、小説のせいにされたこともある。確かに物書きをする料理人は珍しいかもしれない。しかしこの世の中には、小説を書くキツネやペンギンもいる。うさぎもいれば、饅頭だている。何故なのか、どうしてなのか。料理人ばかりが、何故咎められなければならないのか。
 そんなある日、私はほんの悪戯心で小説投稿サイトに一つの掌編をアプした。物語のワンシーンで、釣りをしていた熟練の料理人が波に呑まれて命を落とす。岩さんが帰らぬ人となたのは翌日のことだた。
 そう。岩さんが口にした通り、私の仕事はのろいだ。子供の頃から、自分はおかしいと感じていた。作文に書いた妄想が、現実となることがある。私は言霊を操れるのだ。料理に注文をつけた客、仕入れの品を偽装しようとした業者、SFコンテストにうつつを抜かしている投稿者。不幸に陥れたのは、岩さんだけではない。

 ところが、今の私は平凡な一人の人間だ。ちうど岩さんが波にさらわれて以来、私は理解不能な現象に見舞われている。
 やはり岩さんは、料理に専念しろと言ているのだろうか。真剣に、真面目に、魂を削た作品が、身に覚えのない内容にすり替わる。ああ、これはどうしたことだろう。いつしか私の書いたものは、いじり小説なるレテルを貼られようになていた。

 投稿画面に表示された、数千字の文字列たち。それが作品として公開された瞬間、別物へと変貌してしまう、そんな現象に悩まされてもう長い。
 私一人が理不尽な目にあうのはこりごりだ。1位になた投稿者こそ、呪われるべきではないだろうか。
 まともな小説を書く者は、呪われてしまえばいい。キーボードが壊れたり、あんぱんを買たらあんが右端しか入てなかたり、ありとあらゆる禍に見舞われればいい。

 それはともかくとして、さまざまな方法を試みた私だが、一つだけ試していないことがある。それは時間外の投稿だ。
 ここに投稿した人たちは、蛸壺に入たタコも同然。もはや逃げ道などない。
 投票期間が終わたら、私は言霊の力を使うことにする。今度こそ、岩さんを欺いてやるのだ。
 みなさんに幸あれ。果たして、誰が1位になるの・・・

 と思ていたら、どうやら終わり時が訪れたようです。
 ほら、聴こえませんか、波の音。
 きと岩さんが呼んでいるのでしう。
 みなさん、お世話になりました。最後に一人くらいは道連れにできるかな?

 順位を

      気にする余裕は……


                               もう……



    だ……

                             れ… …


  に…


                              し…

           …よ



                            ……


                   …う



                                    ……
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