てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
第21回 てきすとぽい杯
〔
1
〕
…
〔
3
〕
〔
4
〕
«
〔 作品5 〕
»
〔
6
〕
〔
7
〕
…
〔
15
〕
策士、策に溺れる。
(
あくああるた。
)
投稿時刻 : 2014.09.20 23:27
字数 : 717
1
2
3
4
5
投票しない
感 想
ログインして投票
策士、策に溺れる。
あくああるた。
誰かの携帯電話が鳴
っ
た。
そ
っ
と右ポケ
ッ
トから携帯をとりだすと、どうやら友人のAだ。俺はAが友人の中で最高に好きだ。
はやる気持ちを抑えて通話ボタンに手を掛けた時、左ポケ
ッ
トの携帯が鳴
っ
た。
さ
っ
ととりだすと嫌いな友人のBだ
っ
た。こいつに電話番号を教えた覚えはない。
とにかく嫌いだ。こいつ俺のカレー
の福神漬け勝手に食うし。
ち
っ
と舌打ちすると、机の上に置いてあ
っ
た携帯電話が鳴
っ
た。バイト先からの着信だ
っ
た。
冷や汗がでる。こないだ始めたばかりだが、三日で行くのをやめたバイト先だ。
俺はこの中でひとりだけと会話がしたいと思う。からだはひとつなのだし非常に合理的だろう。
となるとあとのふたりは俺と会話をすることができない。ちなみに俺はBと会話をしたくない。
さすがに待たせるのは心苦しいが、体をふたつに分けることはできそうになか
っ
た。
肺も腎臓もふたつあるのに難儀だと思う。
となるとやることはひとつだ。
Bからかか
っ
てきた携帯電話を180度回転させると、おもむろに通話ボタンを。
バイト先からの携帯を通話状態にして横にする。
もしもし、おい
っ
。という声が反響して勝手に会話が始ま
っ
た。良い出会いを。
これで大丈夫だ。俺はこれ以上ないほどに心穏やかに、心置きなくAと会話することができる。
さてと、と最初の携帯電話を手に取る。
な、なんと画面の向こう側であほづらをした男がこちらを見ているではないか。
目があうとニタ
ァ
っ
と薄気味の悪い笑みを浮かべたそいつは、急に不機嫌な顔に戻り、そ
っ
と視界から消えた。
しばらく動くことができない。まるで金縛りにあ
っ
たみたいだ。深い悲しみとともに。
俺はゆ
っ
くりと携帯をポケ
ッ
トにしまうと、さめざめと泣いた。
Aからの着信は、切れていた。
←
前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感 想
ログインして投票