第25回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動3周年記念〉
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中国の広島県から渾身の告白ダヨ
投稿時刻 : 2015.02.14 23:19
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中国の広島県から渾身の告白ダヨ
なんじや・それ太郎


 最近、職場には自分で作た弁当を持ていている。おかずは近所の業務用スーパーで買た冷凍のハンバーグと塩ジケである。どちらも中国産だ。安い食材を求めると、どうしても中国産に行き着いてしまう。中国の毒餃子や怪しいペトフードの話を忘れたわけではないが、「自分だけは大丈夫」だと思いたい。それに駅弁やらコンビニ弁当だて実際何が入ているか、わかたもんじない。別にドブ水をすくて飲むわけじあるまいし、中国産の食材が本当に危険なら、あの国ではもとバタバタと人が死んでいるはずだ。しかし、どこい。め人の数は多いではないか。大丈夫、大丈夫。そんなわけで、今日もレンジでチンしたおかずを入れて、私は職場へと向かた。
 大広島信用組合は最近合併してできた信用組合だ。私はそこでシステムエンジニアとして働き、システムの統合の作業を行ている。最近まで大阪や岡山で金融機関のシステムを担当していた。地元の広島で働けるのは楽しい。何よりもこの職場には「ネトウヨ」がいない。最近はどこで働いても昼休みには中国や韓国の悪口で盛り上がる。私はそれに眉をひそめていたのだ。何と言うか外国の悪口で憂さを晴らすだなんて、人間の品格を疑う。しかし、この職場にはそんな連中はひとりもいなかた。逆に「尖閣諸島は無人島だし、中国にあげちえばいいのにね」なんて話題で盛り上がるほどだ。
 つい先日のことである。「受験科目に漢文は必要か?」という話になた。私は必要だと思ていたので、もし誰かが不要だと言い始めたら反論するつもりだた。
 「まあ、西欧ではラテン語や古代ギリシア語を学ぶのと同じだよね」
 「そうそう。確かに学校ではやらないけど、お経なんかも漢文に翻訳したものだし。日本人の魂の形成に大きく関わているよ」
 「高山さんはどう思う?」
 誰も不要だと言わないので、当てが外れて面白くなく思ていると、そんな質問をされた。
 「どう思うと言われても……」とつぶやきながら、私はちと悪戯けを出してこう言た。「私は中国の広島県出身だから、漢文もペラペラよ。わしゼンジー北京か!」
 ふふふ、見事なノリツコミだ。
 だけど周囲の雰囲気は微妙だた。やはり面白くなかたか。自分の渾身のギグが受けないとは、こんな悲しいことはない。
 「何だ、高山さんも、いつの間にか中の人が入れ替わていたんだ」
 「てきり日本人のままだと思てたよ」
 「待て、お前ら。ゼンジー北京の真似をして喜ぶ中国人なんていないぞ」
 「嘘だろ? だとしたら、こいつ……
 何なんだよ、こいつら。もしかして全員、中国人なのか? 中の人が入れ替わて、どういう意味なんだ?
 「ボク、日本語ワカリマセン」
 そんなボケを咄嗟にかましてみたのだが、なぜか連中の表情は険しい。
 「あなたには中国の山奥でワサビ畑でも管理してもらおうか」
 どういうことか、わからない。というか、何かの秘密を知てしまたような気がするのだが、命だけは助かるみたいだ。日本を離れるのは寂しいが、ワサビと一緒に過ごせば命だけは助かりそうだ。
 私はすかり観念した。彼らは紛れもなく中国の工作員だた。日本の西の方から少しずつ日本人と中国人を入れ替える極秘作戦を行ていたのだた。こうすれば日本人を殺すこともなく、平和のうちに日本を占領できる。さすが人口の多い国に住む連中の考えることは違う。
 そして私は中国の山奥に移住し、ワサビを作り始めた。慣れないのでうまくいかないこともあるが、不良品を日本の業務スーパーに安く売ているので大丈夫。ごめんなさい。現在、日本にいる高山某は山西省出身の中国人・王十全です。というか、僕がそうです。こんにちは、初めまして。これから中国人はどんどん東進して勢力を拡大しますので。東京オリンピクまでには、日本の3分の2は中国人の支配下に置かれるでしう。
 みんなもそのうち中国人と入れ替わて、本物は中国の山奥でヤギを飼たり、イチゴを育てたりすることになるでしう。それもきといい人生でしう。
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