*――創文板 将棋祭――*
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モノリス語は盛大にエコーがかかります
投稿時刻 : 2013.11.09 21:14
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モノリス語は盛大にエコーがかかります
伝説の企画屋しゃん


前回までのおはなし

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 第三惑星を後にして何年が経ただろう。
 ヒ・ヤトイ・クーンは、ありとあらゆる星を訪れていた。
 ある重大な目的を胸に秘め、宇宙をさまよていたのだが、礫漠に覆われた辺境の惑星に降り立たとき、ついに心がぽきりと折れた。
 俺は、もう詰んでいる。
 そう、ヒ・ヤトイ・クーンは悟てしまたのだ。
 第三惑星をも蹂躙したエイコー星人。
 彼らから逃れ、甘美な糸を引くあの発酵食品を味わえる場所など、すでにどこにもないということに。
 数億もの星を巡てきた結果が、投了という有様だた。
 第三惑星から持ち運んだ大量の大豆は、長い旅の末にほとんどが砂粒状に劣化してしまている。
 泥臭く香ばしいあの味も、洗練されているとは言い難いあの匂いも、再びヒ・ヤトイ・クーンが堪能することはない。
 そば190円と刻まれた表面から一粒二粒と涙がこぼれ落ちていた。
 打つ手は、もうどこにもないのだ。
 味方をすべて失た盤上の駒のように、ヒ・ヤトイ・クーンは乾いた大地の上で立ちすくんでいた。
 そうして、どれほど忘我の時を過ごしただろう。
 やがて、ヒ・ヤトイ・クーンは聞き取れないほどの小さな声で何事かをつぶやいた。
 モノリスが言葉を発することは、一生のうちに数えるほどしかない。
 が、ヒ・ヤトイ・クーンにとては、今がその時だたのだ。
 何度もかき混ぜながら食すあの発酵食品のように、ヒ・ヤトイ・クーンの感情は抑えきれないほどに激しく渦巻いている。
 誇り高き我々種族が、卑しいエイコー星人の捨て駒であるものか。
 いや、そんなことはどうでもいい、捨て駒でもなんでもいい。
 ともかく、俺の望みはひとつ。

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
 な
とうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとうとう
食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い食い


 ちうどその頃、巨大な一枚岩の向こうでは、食物連鎖の頂点に立つ狡猾な砂犬たちが群れ同士の争いを繰り広げていた。
 しかし、どこからか鳴り響く怪音を耳にした途端、同胞の喉を食い千切る愚かさにふと罪の意識が芽生えてくる。
 一匹の砂犬が、突如として敵将の前に立ち、地面に井の字を描いてみせた。
 そして、その中央に○を刻み、好きなところへ×をつけろと、敵将へ告げた。
 ○か×、先に3つ並んだほうの勝ちとしよう。
 砂犬はそう訴えたのだ。

 遠い未来、いつしか井の字は次第にその数を増やし、やがて81の枡を持つに至ることとなる。
 血で血を洗う争いは消え、盤上の駒を用いて勝敗を決する文化が生まれた瞬間だ。
 けれども、そんな先の出来事は知らないまま、ヒ・ヤトイ・クーンは新たな美食との出会いを求め、再び宇宙へ旅立た。
 美食家に大切なのは粘り強さだ。
 第三惑星の納豆という食べ物が、それを自分に教えてくれたではないか。
 銀河を疾走するモノリスの雄たけびが、通りがかた星を包み込む。
 その星の猿人は、地面に落ちている棒状の岩を手に取た。
 数千年の後、それは武器と呼ばれるようになる。
 モノリスがもたらすものは、知性なのか破壊なのか。
 ただ、納豆さえあれば救われた星があるということだけは、宇宙の神は知ていた。
 
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