【BNSK】品評会 in てきすとぽい season 14
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権兵衛、よみがえる
投稿時刻 : 2015.09.23 15:30 最終更新 : 2015.09.23 15:32
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- 2015/09/23 15:32:09
- 2015/09/23 15:30:45
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権兵衛、よみがえる
伝説の企画屋しゃん


 潜入するのは、この街の名所サグラダ・フミリアだという。
「待ち受けているのは、おそらく三人。ガウデ、ダリ、ピカソ。この国が生んだ芸術家たちだ」
 通りすがりの食堂でランチを済ませると、黒腕はそう言た。
「彼らの創作欲が亡霊となてさまよていると。それを祓うのが我らの仕事である、お主はそう説明しているのだな」
「仕事というよりもリハビリさ。権兵衛さん、あんたには重要な役目が待ている。まずは勘を取り戻してもらわないとな」
 予想外に起伏に富んだバルセロナの街を歩く。
 権兵衛ははじめて目にする欧州の景色に心を奪われていた。
 海岸線に沿ていくつもの丘があり、近代的な建物が斜面に建ち並んでいる。
 遠くにはピレネー山脈がうかがえ、故郷の富山の風景を思わせた。
 日差しは強いが、二人はシツの袖をめくることもない。
 黒腕と名乗る男と同様、権兵衛も左腕に大きな黒いアザを持ていた。
「最終目的地は北アフリカ。ここから南へ下り、海峡を渡る。そういう話だたが」
「そう。あんたと出会たのも運命という奴だろう」
 season6において命が尽きたと思われた権兵衛だたが、隣を歩く黒腕に死を妨げられたのが十日前。
 入間の駅前で息を吹き返すと、権兵衛は黒腕の従者となていた。
「入間で死にかけた100歳のわしが、今こうして南蛮の地を訪れ歩いている。それも若きし日の身体に甦て。黒腕殿、お主は相当の術者のはず。果たしてわしの手助けなど必要なのだろうか」
「俺の術など所詮まがいもの。あんたと同じく死にかけ、助けられた時に勝手に身についただけだ。興味があるなら、第26回目本フンタジー述べるを読んでくれ。ビルマで祓い師の修行を積んだあんたに比べれば、ガラス球の宝石も同然さ」
 死の間際、やおら左腕を掴まれたことを思い出す。
 無残な最期を遂げ、悪鬼と化した戦友を成仏させるため、憤りや欲望を取り込む法力を得た黒き腕。
 よもや再び修羅の道に戻るとは思いもしないことだた。
「それで、黒腕殿。北アフリカのその……。なんだたかな」
「過激派組織、I am SYAN。略称IS。その首領の息子がモロコにいるらしい。俺たちはそいつに取りついた禍々しきものを祓うのさ」
 聞けばその息子の父・ヤバイは、各国のジナリストをさらては首ちんぱしてきたという。
 父の暴挙に恐れをなした息子は家出をし、国中をさまよた。
 だが無政府化し、日に数万の犠牲者が生まれる国である。
 とある古代遺跡で野宿をした際、息子は犠牲者たちの魂に取りつかれてしまたのだ。
「恐らく父と同様、悪しきものを呼び寄せる性質なのだろうな。先の大戦もそのようにして出口を失た」
「そういうことだ。つまり息子を放置すれば、第二のI am SYANが生まれる。俺はそれを阻止する依頼を受けているわけだが、さすがに一人では荷が重いと思ていた。しかし俺の右腕とあんたの左腕。この二つが揃えば、たいていものは吸収できるだろう」
 できればコンゴウへの想いを秘めたままあの世へ行きたかた。
 苦々しいものを噛み潰しながら坂を上がると、フラメンコシのポスターが目に飛び込んだ。
 艶やかな衣装をまとたフラメンコダンサーは、恋仲だたコンゴウを彷彿とさせる。
 思えば、人生で最高のモテ期だた。
 自分のすべてをさらけだし、権兵衛を骨の髄までしぶるが如く欲したコンゴウ。
 食べちいたいとまで望まれたのは、後にも先にもそれきりだ。
「ともかく後戻りはできない。俺はあんたの精に触れてしまたのだからな」
 曖昧なことを口にすると、黒腕は来た道を指差した。
 視線の先には、異様なフルムの建造物がそびえていた。
「あれがサグラダ・フミリアか。なるほど、表現とは欲の塊。取りつかれた者が至る道。だが、あれほどのものともなれば……
「そう臆するな。思念体のように取り残された創作欲。そいつを浄土に送てやるのが、俺とあんたの初仕事てわけさ」
「ところで、黒腕殿。一つ教えていただきたい。ピカソやダリの創作欲ともなると、もしかして……
「おと、妙なことは考えるなよ。これはやるかやられるかの戦いだ」
 不穏なものを嗅ぎ付けたかのように、険しい目を向ける黒腕に権兵衛は肯いた。
 ち、若造め。
 消滅する前に絵を描かせたら、ビルマにいくつの学校が建つと思ているのか、この馬鹿ちん。
 そう思うとともに、だがしかしという懸念も走る。
 理性を失た彼らに、芸術性を備えた作品を仕上げる能力が残されているのだろうか。
 試しに権兵衛は報酬はもらえるのかと聞いてみた。
 ドルで1000万だという答えに、権兵衛のモチベーンは最高値まで跳ね上がた。
(次ページへつづく)
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