小説、それは革命であーる 第1回犬吠埼一介杯
 1  2 «〔 作品3 〕» 4  8 
一年中夏休みにするために
投稿時刻 : 2015.08.02 13:08
字数 : 888
5
投票しない
一年中夏休みにするために
三和すい


 照りつける太陽。
 熱を発するアスフルト。
 朝から鳴き続けている蝉のコーラス。
 うだるような暑さの中、俺は家を出たことを後悔していた。
 暑くて何も作る気になれず、昼飯はコンビニで何か買うかと財布だけ持て出かけたのが間違いだた。
 熱気が漂う中、道を歩いているのは俺だけ。
 学校は夏休みに入ているはずだが、子供の姿さえ見当たらない。
 この暑さだ。冷房が効いた家の中に、みんな引きこもているのだろう。
 昨日の帰りに何か買ておくべきだたと反省しながら空き地の前を通りかかると、人がいた。
 キンプフイヤーのように大きなたき火のまわりで、怪しげな衣装を着た男が狂たように踊ている。
 最初は幻かと思た。
 次に何かの撮影かと思た。
 しかし、俺と踊り狂う男の他には誰もいない。
 とりあえず通報するかと携帯電話を取り出そうとした時、踊ている男がこちを向いた。
 その顔に、見覚えがあた。
「さ、佐藤?」
 間違いない。高校の時の同級生だ。
「お前、何やているんだよ!」
 俺が慌てて駆け寄ると、佐藤は踊りをやめた。
 そして、俺に向かてこう言た。
「日本を暑くしているんだ」
「は?」
「これは俺が独自に作り上げた日本を暑くする儀式だ」
 佐藤は真面目な顔で言た。
「何故、日本の会社の夏休みは短いんだ。ヨーパでは一月ぐらい夏休みがあると聞くが、日本の会社の夏期休暇は三日間だ。土日と合わせても連続して五日間しか休めない」
 まあ、有給休暇を一緒に取て九日間休みにすることもできるが、会社によては難しいだろう。
「子供の頃から俺はずと思ていた。一年中夏休みだたらどんなにいいかと。しかし、日本には四季がある。夏はいずれ終わり秋が来て冬になる。夏が来るまで九月も待たなければならない。つまり、たとえ一年中休みになたとしても、一年中夏休みにするのは現状では不可能だ!」
 佐藤は高らかに叫んだ。
「だから俺は日本を暑くする! 日本を一年中暑くして、一年中夏休みを満喫するのだ!」
「それよりも、一年中夏みたいな国に行た方がよくないか?」
 俺の言葉に、佐藤は沈黙した。

 後日、佐藤が七月に会社を辞めていたことを知た。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない