第4回 てきすとぽい杯
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別荘にて
投稿時刻 : 2013.04.13 23:30 最終更新 : 2013.04.16 20:33
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- 2013/04/16 20:33:35
- 2013/04/13 23:41:00
- 2013/04/13 23:35:10
- 2013/04/13 23:30:26
別荘にて
廣川ヒロト


 僕は車で山道を走ていた。向かう先は、山の頂上付近にある別荘。学生時代の友人であるヨーコから、遊びに来ないかと招待を受けたのだ。
 ヨーコは金持ちである。親が資産家なのだ。

 派手好きで、奔放な性格だが、嫌味なところがなくて皆から好かれていた。一部、強烈に嫌ていた連中はいたが、それでもヨーコ自身は特に気にしていないようだた。金持ち喧嘩せず、という訳なのだ。

 別荘に辿り着いた。すると玄関先に、見知た面々が困惑気味に佇んでいるのが目に入た。
 僕は駐車スペースに車を入れると、颯爽とした足取りで皆の元に近づいた。

 月本や、星川の顔が見える。なんだか深刻な顔つきで話している。おと、あそこにいるのは学年のマドンナだた田中マリではないか。

 月本が僕に顔を向けて「よう」という感じで手を上げる。月本は、少し太ている陽気な男で、カレーが大好き。しかし今日はいつになく厳しい表情だ。

「シンゾー。遅かたじないか」月本が声を掛けてきた。

「ああ。ちと渋滞に巻き込まれてね」僕は適当に答えた。「で、こんなところで何をしてるんだ? 何で中に入らない?」

「それが……」月本は、困惑した顔つきで言葉を濁した。

 星川が「ヨーコの携帯につながらないんだ。そして玄関には鍵がかかてるし」と説明した。星川は、背の高いイケメンだ。学生時代、マリと付き合ていた、という噂がある。本当かどうかは分からない。僕とはライバル関係にあた。そう思ているのはこちらだけで、星川は何とも思てないかもしれないが。

 まあそれはいい。ヨーコの携帯に繋がらない。そして鍵がかかている? それは変だな。


「あれ、みてみろよ」月本は、別荘の玄関を指さした。すると、玄関には一枚の貼り付けてあた。

[※ここに挿絵]

 月本が首を傾げる。「これ、なんだと思う」

 僕は、玄関に貼り付けてある絵を睨み付けた。これは……。まさか……

 ややあて僕は深く頷いた。皆を振り返りる。マリとちらりと目があて、僕はドギマギとした。ここは、良いところを見せるチンスだ。

「これは暗号だ。間違いない」僕はきぱりと言い切た。「ヨーコが僕らを試しているんだ」面白い。パーの余興というやつだな。


「ほう」星川が見直したような顔をした。
 マリは、期待に満ちた目で僕を見ている。

 星川が言う。「じあ説明してもらおうか。俺たちはさきからああでもないこうでもないと言い合ているんだ。でも答はでない」

 僕は張り紙に向き直た。「簡単じないか。これはつまり……」僕は、頭をフル回転させた。頭が痛くなてきた。目を瞑る。耳が熱くなてきた。……ああ、駄目だ。目眩がする。

 次の瞬間、目を開いた。

「この張り紙には、複数の意味が込められている。この星は、星川のことを指してる。そして、月は、月本だ。そして太陽は……マリのことだろう。マドンナだたから」
 僕は振り返た。皆は、訳の分からないといた表情で僕の顔を見返してきた。僕は続けた。
「分岐点を一つ通過すると、星に辿り着く。分岐点を三つ通過すると月本に辿り着く。そして、分岐点を四つだとマリ……

 訳が、分からない。何を書いてくれとんねん! イヤな汗が脇の下を濡らした。

「それで?」星川が促す。

「それで……」僕は言葉に詰まる。「それで……分岐点が一つが星だから、コレはつまり利屁だ夜まで待て。ということだよ」僕は空を仰いだ。もうすぐ日が暮れる。
「そして、ハートは……。皆が心に手を当てて考える必要がある、というヨーコの示唆だろう。そして水と太陽は、この集まりの本質を表してるんだ。水と火。つまり対極……

 僕が必死に言葉を紡いでいると、外車が近づいてきた。外車は玄関の前で停車した。運転席から下りてきたのはヨーコだた。

「あら。いらい。早かたわね、みんな」
 ヨーコは鍵を取り出し、無造作に玄関の鍵穴に突込んだ。ドアを開け「さあ、みんな入て」

 月本がドアの張り紙を指さす。「これはなに?」

「ああ、これは。最近、変な勧誘が多いから、それを撃退するための、タダの落書きよ。何も意味はないの」ヨーコはニコと笑うと、別荘の中に入た。

 ふう。
 マリや星川の、突き刺さるような視線を感じつつ、僕はパーの時間を過ごした。
 慰めてくれたのは、月本だけだた。

おわり 
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