第4回 てきすとぽい杯
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世界のはて
投稿時刻 : 2013.04.14 00:45
字数 : 1072
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世界のはて
住谷 ねこ


「ありがとうございます」

そういて 優子ちんのお母さんは
丁寧に頭を下げた。「

優子ちんは昨日 亡くなた。
小児癌で 小さな体でずいぶん頑張たが
長時間の手術に耐え切れず
た7才の短い生涯を終えた。

担当の小さな患者が亡くなるのは
何も初めてではない。
前は外科にいたので
交通事故や、暴力によ
亡くなる子供たちをたくさん見た。

子供だろうと 大人だろうと
人間は 死ぬのだ。

比較的明るいと思われる産婦人科にいた
死に出会うことは避けられない。

病院なんだから それはしかたがない。

なるべく 親しくならないように
あまり感情移入しないように
気をつけて気をつけて

だけど 優子ちんとは不覚にも
つい 親しくなてしまた。

手術の日取りが決また日
いつも 看護師を困らせたりすることのない
優子ちんが珍しく消灯時間が過ぎても
寝ようとせず、注意をしに行くと
絵を描いていた。

※ここに挿絵

「上手ねえ 木?」

「うん。 木。 木だけど地図なの」

「地図なの?」

「大事な地図なの」

それは病院からみての地図で
左にいくと ☆。

星のところには プラネタリウムがあ
お父さんが何度か連れて行てくれたところ。

月のところは 学校。
優子ちんが通う 月見が丘小学校。
2年生になてからはあまり通えなかたけど。

あーなるほど
確かに これは地図だ。
おおざぱではあるけれど
このとおりに進むと プラネタリウムも学校もある。

うれしそうな優子ちんの話に
私ものめりこんでしまた。

「このしずくみたいなのは?
  しずくじないのかしら… えーと 
  このあたりには何があたかしら」

優子ちんは面白そうに笑
でも少し恥ずかしそうに
「これは しずくじないよ 肉まんなの」

「肉まん?」

「うん。コンビ二の肉まん」

ああ そうか うんうん。
確かにあるね。 コンビ二。

「初めて食べたんだ。 肉まん。
   吐いちたけどさ」

「それでこのお日様のところは 公園
  おとうさんと おかあさんと
  お弁当もて 何回か行たの
  春にはたくさん花が咲くの」

「うん」

「また 行くんだ」

「うん…… さあ もう寝ないと」


これは 優子ちんの好きな場所に行くための
地図だ。 まだ幼い優子ちんの
てる限りの狭い だけど すべての地図だ。

息苦しくて とても見ていられなくな
私は最後のハートマークを聞かずに逃げ出した。

そして この絵のことは
ドを片付ける時にマトの下から出てくるまで
忘れていた。

優子ちんのおかあさんは
いとおしそうに絵をなでながら
私の地図の説明を うなづきながら聞いていた。

「ハートのところは……
  すみません。 聞いてないんです」

「いいんです。わかりましたから
  ここは 仲良くしてくれていた祐樹君の家なんです」
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