商談相手とやれよ! お前ら!
平成生まれには、存在自体が知られていないであろう「リゲインのCM」。
三共製薬の栄養ドリンク「リゲイン」のイメー
ジソングを、牛若丸三郎太(時任三郎)が歌っており、「24時間戦えますか ビジネスマン」というモーレツなフレーズが、その昔、一世を風靡した事がある。
とある商社に務める二人、「藤子ビジネスマン不二雄(以下、藤子B)」と、「藤子サラリーマン不二雄(以下、藤子S)」とが、本当に24時間戦えるのか否か、競争することになった。
藤子Sは、真面目な性格と、自慢の体力とを活かすべく、とにかく寝ない事によって、この課題をクリアした。眠気覚ましに使ったのは、メガシャキであった。
後日、藤子Sが事の顛末を話したところ、藤子Bはこう言って、勝ち気な表情を覗かせた。
「お前さ、そこはリゲインを使う所だろ? 空気読めよ。次は、俺の華麗な戦い方を見とけ!」
そう言って、今度は藤子Bの出番となった。
藤子Bは、フランスと日本とを結ぶ飛行機の直行便に乗ったのである。
サマータイム中は、日本とフランスとの時差は7時間。
例えば、フランスがお昼の12時の時に、日本は19時なのだ。
日本で今日の19時に戦いをスタートした場合、日本からフランスへと移動しながら戦い続ければ、体感時間で24+7=31時間経過後に、フランスでの翌日19時になる。
ここで、リゲインのCMには、「体感時間としての24時間は認めない」等の縛りは存在しない。
その結果、藤子Bは、途中で7時間の睡眠時間を悠然と確保しつつ、「日本時間19時」から「フランス時間の翌日19時」までの間に24時間戦う事ができたのであった。
後日、藤子Bから事の顛末を聞いた藤子Sは、地団駄を踏んで悔しがった。
藤子Bが藤子Sを慰める。
「いいか、お前。『24時間戦えますか ビジネスマン』って事は、「ビジネスマン」しか対象としてないわけよ。お前はサラリーマンなんだから、『そもそも戦わない』という、もっと楽な方法もあったんだぞ?」
「なんだよそれ!」と、藤子S。
「本来そういうものなの。ただ真面目にこなせば良いってんじゃなくて、効率も考えて、改善していくものなわけ」と、藤子B。
このやり取りを、藤子Bと藤子Sとが務める商社の部長が、部屋の中央、奥のデスクで聞いていた。
部長は、二人にこう言い放った。
「いいから仕事しろよ! おまえらは一体、何と戦っているんだ?」
「時間です」
「時間です」
藤子Bと藤子Sの声がハモる。
「『24時間と戦えますか』ってか。相手はそれじゃねーだろ」
部長は、そう言ってため息をついた。
<了>