鯖道~mackerel’s load~
――漁獲量過去最高一六十トン。日本古来から愛される彼らの素顔に迫る。
茨城県某海岸。コンクリー
トに波打つ大海原の前に立った我々取材陣は、恐れおののいていた。その日、日本列島は台風に見舞われた。大雨が日本各地を襲い、浸水や土砂災害に苦しんでいた。そんな最中我々は波立つ大海原の前に立つ。それはなぜか。そう。彼らはもうすぐ我々の前に現れるからだ。
大粒の雨がカメラにぶつかる中、我々は発見した。機械音を響き渡らせ、こちらに向かってくる。それは漁船だ。
「おはようございます」
そう返事が飛んできたので、我々も返事を返した。漁船は岸までたどり着き、体をコンクリートに預けた。乗組員が籠を持ち、陸に上がる。そのたびに我々の緊張は高まるのだ。
「今日はよろしくお願いします。日本産。マサバです」
我々はその貫禄につばを飲み込んだ。
――日本メジャーの魚類。鯖。
我々の独占インタビューの取材にOKしてくれた、たった一匹のマサバ。太平洋から北上してきた彼に乗っている油が、太陽光でより輝いていた。
「私たちの先祖からお話は聞いていました。日本人に特に愛されていたと」
始まりは縄文時代まで遡る。貝塚から数々の貝が出土する中、その骨はありました。鯖だ。飛鳥時代には、既に「鯖」と呼ばれていたようだ。約一万五千年前から我々の血肉には、鯖のコレステロールが含まれていた。
「私たちにとっての、味、ですか」
彼は聞いてもいないことを話し始めた。
「私たちを捕るのは人間ですし、私たちがおいしくなろうという気はありません」
江戸時代には鯖寿司、塩焼きや煮つけなど様々な調理法が存在した。その時の気分しだいで、我々は様々な形態へと鯖を変えてきた。それはどれも美味である。しかし、それは人間がそう思っているだけだ。彼はそう言った。
「でも、それはある意味誇りであって、私たちが生きていられる根底なんです」
――大量水揚げのその先は
日本人は鯖が大好きという考え方は間違ってはいない。しかし、現在はむしろ捕りすぎだという声が上がっている。
「私たちは魚です。だから加工して保存も難しいでしょうし、そろそろ遠慮はしていただきたいかなと」
鯖に限った話ではないがどうしても保存が難しい。だからこそ新鮮な状態で食べることが大切なのだ。このマサバはそう伝えたがっている。本日はどうもありがとうございました。
「ありがとうございました」