てきすとぽいトップページへ
第35回 てきすとぽい杯
 1  2 «〔 作品3 〕» 4  9 
千鳥屋騒動
 投稿時刻 : 2016.10.15 23:31 最終更新 : 2016.10.15 23:33
 字数 : 887
5
投票しない
更新履歴
- 2016.10.15 23:33:28
- 2016.10.15 23:31:01
千鳥屋騒動
白取よしひと


 お江戸吉原五丁町でも筆頭の千鳥屋てい二本差しの大禄取りでも敷居が高て評判だ。その千鳥屋が何やら剣呑な騒ぎが起きてるから、馴染みの江戸子からお上りさんまで店先はこの通りの人集りよ。格子から顔を覗かせた女郎たちも心そぞろで客引きどころじ。見かねた主人が格子を閉めて戸口を牛助に守らせてるてんだから千鳥屋も泣きが入るね
え!あしですか。実はと云うと先だてまで千鳥屋の牛でござんした。旦那。こんな手前だ今夜は千鳥屋は諦めたほうがよろしいようで。

 千鳥屋一番の売れ子で呼び出し花魁を務めている扇花の部屋で扇花と二人の男が対峙していた。それを傍らから主人とその内儀が落ち着かない体で見守ている。
男二人の内一人は、二本差しで大層な身分の様だ。片や一人は町人であるがこれもまた大店の主人らしい。二人は扇花の身請けを巡りその権利を主張し譲らないのだ。
 両名共財力は申し分ない。店のしきたりである納金は十分払えるし、先手の利もこれまた同日に申し入れがあた為、主人等はほとほとその対応に困り果てたのだ。両名とも店にとては上客であり粗相があてはならない。そこで扇花本人に男を決めさせようとしたのだ。主人は脇に汗を滲ませながら扇花を促した。

「扇花や。このままお前が黙ていては旦那様方もお困りになる。お前の気持ちを聞かせておくれ」
「あちきは」
扇花が漏らすと男達は前のめりになた。
「それでは申し上げましう。あちきをお身請けされた後おまはんはどの様に大切にしてござりんすか」
侍が膝を進めた。この男どうやら大名らしい。
「参勤も終わり国元に帰た暁にはおんしに館を建てて使わそう。次女も付ける故何不自由無く暮らせるぞ」
それではと商人が語り出した。
「私は商いをする身。暫くはお前さんに手伝て頂かなくてはいけないでしう。その分隠居してからは二人でのんびりと過ごしたいものじ
首を傾げ聞き入ていた扇花は頷き、わちきの旦那様は決まりましたと両手をついた。果たしてどちらが身請け出来るのか。それは扇花が懐から取り出した小判に紅落としの紙を重ねた事で主人は成る程と唸た。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない