第37回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動5周年記念〉
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食肉裁判
投稿時刻 : 2017.02.18 23:43
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食肉裁判
三和すい


 しんと静まりかえた法廷で、最初に口を開いたのはペンギンだた。
「世間一般的に『鳥肉』と言えばニワトリの肉を意味するのは常識中の常識。つまり、鳥の中で食べられるのに相応しいのはニワトリである!」
「異議あり!」
 すぐさま赤い鶏冠のニワトリが大声で叫んだ。
「ペンギンもニワトリも鳥である。同じ鳥である以上、ペンギンもおいしく食べられるはず。ニワトリだけを食べるのはおかしい。すなわち、ペンギンも食べられるべきである!」
「ペンギンを食べる? あの可愛らしいペンギンを? そんなことが許されると思ているのか? ペンギンは愛でられるためにこの世に存在する生き物。あのヨチヨチ歩く愛らしい姿の鳥を食べるなど許されるはずがない!」
「愛でられるために存在する? その根拠はあるのか?」
「多くの水族館や動物園にはペンギンコーナーがあり、みんなの人気者だ! その人気者を食べるなど言語道断! ペンギンを食べようとする者などいるはずかない!」
「それはどうかな」
 白いニワトリはニヤリと笑う。
「『南極記』という本によると、かつて初めてペンギンと遭遇した日本の南極探検隊は、そのペンギンを剥製にし、肉は味噌煮で食べたという記述がある。ペンギンを食べた者は存在する!」
「それは大昔の話だ! この現代にペンギンを食べようとする者など……
「つい先日、ペンギンのゆで卵が作られたというニスが流れた。チダーチーズのような色の黄身が写たあの写真は、君も見たであろう? どんなに愛でられようとも、鳥である限り食べられる対象となり得るのである!」
「食べたければニワトリを食べればいいではないか! ペンギンよりも数が多く、卵もたくさん生まれるニワトリの方が食べやすいであろう。食べ方も様々。油で揚げる、フライパンで焼く、スープやシチで煮込む、燻製にしても火であぶてもいい。長く食べられてきた歴史の中で数多くの調理方法が生み出されてきた。それはすべてニワトリの肉を食べるためだ!」
「ならば、その調理方法をペンギンに使えばいいだけの話であろう? そうすればペンギンもおいしく食べられるはずだ!」
「ペンギンは数が少ない! 何度も楽しむならニワトリの料理だ!」
「希少種だからこそ、食べてみたいという欲求がかき立てられるのである! 食べるならペンギンである!」
「そのペンギンはどこで捕まえるというのだ! 南極は寒くて遠いぞ!」
「ならば目の前にいるペンギンを食べればいいではないか!」
「ニワトリだて目の前にいるぞ!」

 ガンガン

「静粛に!」
 裁判官が斧を打ち鳴らし、法廷はふたたび静寂に包まれた。
 誰もが息を飲んで見守る中、ウサギ耳の裁判官が口を開いた。
「判決を言い渡す。どちらもおいしそうなので、両方とも狩る!」

 裁判所の中に、二つの悲鳴がこだました。





「臨時ニスをお伝えします。てきすと裁判所で争われていた通称「食肉裁判」の審議中、ウサギ裁判官が突然原告と被告に襲いかかりました。双方の主張を聞いているうちに、かき立てられた食欲を抑えきれなかたようで……
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