暁文学
 1  4  5 «〔 作品6 〕» 7  12 
駆け引きの朝、追憶の今日
投稿時刻 : 2018.04.12 03:44 最終更新 : 2018.04.12 03:48
字数 : 533
5
投票しない
目次
1. 彼は目を瞑って、周囲の音に耳を傾けていた。
2. 彼は目を開けた。
全ページ一括表示
更新履歴
- 2018/04/12 03:48:00
- 2018/04/12 03:44:11
1 / 2
駆け引きの朝、追憶の今日


彼は目を瞑て、周囲の音に耳を傾けていた。
  東の窓から差し込む光を避けるようにそれに背を向けて。

  彼女は彼を見つめていた。
  瞬きをするのを忘れて、彼が目を開けるタイミングを見計らうために。
 
  二人は互いに求めていた。
  彼が聴きたいのは彼女の声だた。
  彼女は朝一番に彼の視界に入りたかた。

  その部屋には時計がない。あるのはセミダブルベドとセンターテーブル、ボクステとゴミ箱。
  余計なものを持ち込まず、いつからか二人は夜に沈む。
  
  雀が鳴いている。彼はその鳴き声より美しい声を知ていた。
  彼女は彼が目を開けるより先に耳元でおはようと囁く。少し掠れた声とともに彼女の吐息が耳に吹きかけられた。
  彼は腕を伸ばし彼女を腕の中におさめる。ゆくりと目を開け、彼女を見つめる。
  彼女はいつものように啄ばむようにキスをする。甘い声を漏らす彼女を制するように唇を塞いだまま、抱き上げて起き上がた。
「今日は君の負けだね」
続きを読む »
« 読み返す