暁文学
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となりのトトロと私
投稿時刻 : 2018.04.23 16:15
字数 : 262
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となりのトトロと私
伊守 梟(冬雨)


 同一の思想で作られたふたつの個体がいま、目覚めようとしている。
「痛みの伴わない目覚めに何の意味があろうか」と紳士は言う。
「俺らもおこぼれにあずかれるかもしれねえぜ」と下人は卑しく笑う。

 やがて、ひとつめの個体が産み落とされ、目覚める。
 世界は終わらずとも崩れ去り、つなぎとめた生命は個を失う。東の空に太陽は浮かび、南の空は月を捕らえようとしている。
 目覚めは始まりであり、終わりなのだ。
 眠りが終わりであり、始まりでもあるように。

 しばらくの時間をおいて、ふたつめの個体が産み落とされる。
 ほどなく、あるものは眠り、あるものは目覚めた。
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