となりのトトロと私
同一の思想で作られたふたつの個体がいま、目覚めようとしている。
「痛みの伴わない目覚めに何の意味があろうか」と紳士は言う。
「俺らもおこぼれにあずかれるかもしれねえぜ」と下人は卑しく笑う。
やがて、ひとつめの個体が産み落とされ、目覚める。
世界は終わらずとも崩れ去り、つなぎとめた生命は個を失う。東の空に太陽は浮かび、南の空は月を捕らえようとしている。
目覚めは始まりであり、終わりなのだ。
眠りが終わりであり、始まりでもあるように。
しばらくの時間をおいて、ふたつめの個体が産み落とされる。
ほどなく、あるものは眠り、あるものは目覚めた。