第47回 てきすとぽい杯
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僕は困っている
みお
投稿時刻 : 2018.10.20 23:15
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僕は困っている
みお


 さて。僕は少し困ている。

「私、昨日、恐ろしいものをみたの」
 僕の目の前で、最愛の女性が肩をふるわせ涙を流す。
「昨日のことよ。外から変な気配がしたの……私、私」
「落ち着いて、レイテ、僕が付いているじないか」
 僕は彼女の肩を優しく撫でる……鉄のようなウロコが清純に浮き出した、可愛いレイテの肩をそと抱き寄せる。角が突き出た彼女の額に唇を寄せる。
 彼女は、きと悲鳴を上げるなり、愛らしい翼をくるりと巻いた。
「まあ、何をなさるの……
「さあ落ち着いたね。何があたか話してごらん」
「昨夜ね……

 目下、僕が口説き落としている最中の、愛らしいレイテ
 食べられたいほどに可愛いレイテ
 彼女は尖た歯を震わせて、恐怖をとつとつと語てみせた。

「昨日、あなたが星占いの話を聞かせてくれたでしう? だから私、深夜に空をみていたの……そうしたら庭から変な音が聞こえたわ。外に出たら……そこにいたのよ」
 レイテは顔を伏せていよいよ震える」
「つるつるの肌、角のない頭、翼のない平坦な背中、牙の無い口……人間が!」
 彼女の小さな悲鳴を聞きつけて、通りのものたちが足を止める。
 一つ目の男。
 魚顔の男。
 ウロコ塗れの男。
 僕は骸骨の手を振て、彼らを追い払う。
「ああ、そんなことか」
 僕は笑て首を振る。
 その拍子に、頭に乗せた骸骨のお面がガクガクと揺れたので、慌ててそれを押さえつける。
……ハロウインだもの。きと仮装だ、人間の仮装でもしてたんだ。そしてパー会場を間違えた馬鹿がきといたのさ、間違い無くね」
「本当に?」
「それか本当に人間が、この世界に迷い込んでいるのか……
「やめてそんな恐ろしいこと。そんな人間、食べてしまいたいくらい恐ろしいわ」
「大丈夫、仮にそんな事があても僕が君を守てみせるよ」
 僕はそう囁いて、彼女を優しく抱きしめる。
「さすがだわ。貴方はいつも私に優しいのね」
 彼女は声を上げて笑い、僕の頬に口づけをする。
 何と嬉しいことに、どうも彼女は僕に脈ありだ。思いが通じて僕は飛び上がりたいほどに嬉しくなた。



 ……さて、こんな時だが、僕は少し困ている。
 ハロウインパーで人間の世界から異形の世界に迷い込んだのは、誰であろう僕自身。
 化け物仮装の小道具も、そろそろ壊れて替えが効かない。
 まもなく僕は、ウロコも翼も角も持たない人間の姿を彼女の前にさらすことになるだろう。
 
 いやいや、困ているのはそんなことじない。

 この世界の住人は、人間を見つければ頭の先から足の先まですかり丸ごと食べてしまうのだ。
 しかし、食べられても構わないくらい、僕は彼女に恋をしている。
 夜中に思わず彼女の庭に忍び込んでしまうくらい、恋をしている。

 いつかその鋭い牙で心臓を貫かれる日を……僕はすかり夢みてる。
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