勝手に連動 第5回ぽい杯スピンオフ賞
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もしボクちんが「箱」でSSを書いたらば
投稿時刻 : 2013.05.20 23:16
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もしボクちんが「箱」でSSを書いたらば
伝説の企画屋しゃん


 ボクス、という掛け声とともに、一歩はピーカブースタイルを取た。
 拳も意味するボクスという言葉だが、相手の左ジブはむしろ槍のように鋭い。
 レフリーはロープ際で行方を見守ていた。
 まだ5ラウンドだというのに、一歩の両目はふさがりかけている。右目はバングで、左は相手の右ストレートで。
 拷問台に張り付けられたように血まみれの一歩の顔面を時折覗き見ながら、レフリーは険しい表情を浮かべていた。
 世界ランク一位のメキシカンは、パワーとテクニクをきわめた完成体だた。時に足を止めて撃ち合い、時にヒト・アンド・ウイで攻守を切り替える。試合勘も、戦略性も、すべてにおいてこれまでの対戦相手より数段上だた。
 しかし一つだけ、この完璧なメキシカンを沈める手がある。一発の威力なら、一歩が上だ。ピンポイントで急所を捉えられれば、10カウントを聞かずとも病院送りにできるだろう。
 瞼からしたたる血で視界は塞がていたが、相手の鎧が自分の拳で砕けるものだという確信はあた。問題はどうやてポストに追い詰めるかだが、リングという箱には必ず壁がある。壁に追い詰め、鎧を砕く。それができれば、次は世界戦のチンスが回てくるはずだ。
 何本もの槍を素早く放ちながら、メキシカンは間合いを取た。体勢を低くして潜り込むはずが、ジブをもらうたびにベタ足になていく。壁が月の彼方にあるかのように遠い。
 一歩を洞察するレフリーの時間が長くなている。両腕のボクスにはまだ力があり余ているのに、 コロシアムの中央に置かれたボクスを支配することは一筋縄にはいかない。
 一歩は上半身を8字の回転させると、デンプシーロールの予備動作に入た。血まみれの代償は頼りない推測だ。相手のメキシカンは、右ストレートを打つ際にわずかにボデが開く。完成体にも癖がないわけでもない。 ――壁に追い詰め、大砲を撃たせる。
 一歩はグローブの中で拳を握りしめ、唯一の望みに賭けることにした。
 セコンドの声も、もはや届かない。
 速射砲のようなジブをもらいながらも、一歩は相手の足さばきを目で追ていた。
 左足で踏み込んできた時が勝負になるだろうが、アキレスにも弱点はある。
 ベタ足のまま、一歩は身体をローリングさせた。
 レフリーが止めるのが先か。それとも、プレに負けて相手が右を撃てくるのが先か。
 腫れた瞼が覆いかぶさた視界に、光は見えない。相手の左足の爪先だけに、一歩は神経を注いだ。
 それが、動いた。一歩は純金製のハンマーのように重たいボクスを撃ち込んだ。 
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