てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
第49回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動7周年記念〉
〔
1
〕
…
〔
9
〕
〔
10
〕
«
〔 作品11 〕
»
〔
12
〕
〔
13
〕
こどもの世界
(
住谷 ねこ
)
投稿時刻 : 2019.02.16 23:52
字数 : 1411
〔集計対象外〕
1
2
3
4
5
投票しない
感想:3
ログインして投票
こどもの世界
住谷 ねこ
水色のリボンが付いたうさぎのストラ
ッ
プがなくな
っ
たと言
っ
て
泣きじ
ゃ
くり、何を言
っ
ても収まらない娘を前に悩んでいた。
「あか
……
あヒ
ッ
…あか
……
あか…ヒ
ッ
……
ウ
ッ
り
っ
り
っ
と
っ
うああ
ぁ
…」
明里ち
ゃ
んが盗
っ
たと言いたいのだ。娘は。
今日、幼稚園の帰りに遊びに来ていて明里ち
ゃ
んが帰
っ
た後
遊んでいたおもち
ゃ
を片づけていてなくな
っ
ていることに気が付いた。
なくな
っ
たうさぎのストラ
ッ
プは、ここ最近の娘の一番のお気に入りで
いつも大切に宝箱に入れて家の中でしか取り出さない。
明里ち
ゃ
んに電話をして聞いてくれと何度も泣きながら訴える。
き
っ
と明里ち
ゃ
んに「かわいいでし
ょ
う」と自慢げに見せたに違いない。
明里ち
ゃ
んの家は共働きでおばあさんが幼稚園の送り迎えとかいろいろ世話をしている。
おばあさんは、結構な年で体の具合もあまりよくないのでどうしても放り出し気味にな
っ
ていた。
明里ち
ゃ
んは家が近いこともあ
っ
てよく家に遊びに来ていたが
娘が無理やり誘
っ
ているのはわか
っ
ていた。
本当は来たくなか
っ
たんじ
ゃ
ないかな。
おとなしくて、なんでも娘のいいなりにな
っ
てくれる明里ち
ゃ
んは
娘の幼い自尊心を満足させるにはち
ょ
うど良い相手だ
っ
たのだ。
き
っ
と、娘は自慢げにウサギのストラ
ッ
プを見せびらかしたんだろう。
今一番のお気に入りだから。
明里ち
ゃ
んは、いつも無理やり誘われては、あれこれ見せられて
面白くなか
っ
たのかもしれない。
盗
っ
たんだろうと思う。
そんなに大げさではなく、ち
ょ
っ
と一日だけとか
間違
っ
てポケ
ッ
トにいれち
ゃ
っ
てとか
そんな感じかもしれない。
たぶん、そう。
小さなものだからどこかに紛れち
ゃ
っ
たんだよ。
箪笥の裏とか、ベ
ッ
ドの隙間とか。
家具は重くて動かせないから、今度の休みにお父さんに手伝
っ
てもら
っ
て
探してみよう。
そう言
っ
て時間稼ぎをしてるうちに娘はたぶん忘れるだろうとも思う。
でも持
っ
て帰
っ
てしま
っ
た明里ち
ゃ
んはこのままでは辛いかもしれない。
いろいろ悩んだ挙句、私は明里ち
ゃ
んに電話をすることにした。
「遊びに来た時、うさぎのストラ
ッ
プを見なか
っ
た?見当たらなくて
どこにしま
っ
たか明里ち
ゃ
ん覚えてないかな
ぁ
、しまうとこ見てなか
っ
た?」
そんな風に聞いた。
本当は娘本人に言わせたか
っ
たが
こんなに泣いていては無理だ。
明里ち
ゃ
んはしばらくだま
っ
ていたが小さな声で「しらない」「みてない」とい
っ
た。
私は、そうか、ごめんね。変な電話して、また遊びに来てね。
そうい
っ
て電話を切
っ
た。
娘には忘れてもらうようさ
っ
き考えた方法をとることにした。
「明里ち
ゃ
ん、知らない
っ
て」
不服そうな娘はそれでも、しばらくし
ゃ
くりあげていた。
すると、チ
ャ
イムが鳴
っ
て出てみると明里ち
ゃ
んが息を切らせて
「私も一緒に探す」そうい
っ
て立
っ
ていた。
それからしばらく二人で部屋でごそごそや
っ
ていたが
娘が「あ
っ
たー
」とい
っ
てウサギのストラ
ッ
プを握りしめてキ
ッ
チンに駆け込んできた。
枕カバー
の端
っ
こに隠れていたのを見つけたらしい。
良か
っ
た良か
っ
たと言
っ
て、わざわざ来てくれた明里ち
ゃ
んにもお礼を言
っ
て
二人で明里ち
ゃ
んの家の前まで送
っ
てい
っ
た。
黙
っ
て出てきたようでおばあさんが心配そうに玄関に出てきていた。
事情を話して娘と帰るみちみち、「よか
っ
たね。みつか
っ
て」
というと娘は「もう、明里ち
ゃ
んとは遊ばない」とい
っ
た。
驚いて立ち止まり「どうして?」と聞く。
娘はま
っ
すぐ前をみながら「明里ち
ゃ
ん、うさぎ泥棒だから」
と言
っ
た。
了
←
前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感想:3
ログインして投票