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- 2019/02/16 23:27:31
- 2019/02/16 23:26:50

　へへへ、あっしでございますか。
　へぇ、あっしこれでもしがない盗人でございまして。
　いや、こりゃここだけの話にしといてくださいましよ。
　酒の勢いで口が軽くなっちゃおりますが、まだお縄にゃつきたかねぇ。
　あっしだってね、酒を飲んでいつも口が軽くなるわけじゃねぇでさぁ。こりゃあくまで旦那だからこそ、旦那を信頼してるからこそ軽くなる口だ。
　だからこの話はあくまで御内密に。
　へへ、墓の中まで持ってってつかぁさい。
　迷惑だなんて言わねぇでくだせぇ。たまにゃあ、あっしも身の上話をしたくなるんでさぁ。
　生まれたときの記憶なんざないが、少なくともここいらの生まれじゃないのは朧気に覚えておりやす。
　当然生まれたときから盗人じゃあねぇですし、どうやら盗人とは縁のない家柄の生まれだったようで。
　そいつが何の因果か、親は殺され、こんなみすぼらしいなりになって、目当てのものがあったら自然と手が伸びる盗人稼業もしっかり身に沁みこんじまった。
　釈迦も八幡もあったもんじゃございませんな。
　あっしにゃ、こうして酒を奢ってくれる旦那のほうが仏様よりも偉い。世辞じゃありませんぜ。少なくとも仏様は酒を恵んじゃくれませんからね。
　まあ、寺の仏像だったら酒代くらいにはなるかもしれやせんが。
　それで、あっしが何泥棒かって？
　泥棒にもいろいろございまして、賽銭泥棒に、下着泥棒、香典泥棒に米泥棒、給料泥棒にはては時間泥棒。
　何でもかんでも他人が持ってもんだったら、盗んでしまえるものでもんでございますな。
　人ってもんが、何かを自分のもんだって思っちまう限り、盗人ってもんは生まれてきちまうもんなんでございますな。
　ひとが、大事だな、大事だなって思うものほど、盗まれちまうもんなんでございますよ。
　さて、ここらであっしはお暇させていただきますよ。
　へぇ、もう旦那からは、頂戴いたしましたから。

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