第50回 てきすとぽい杯
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5分
ぷーち
投稿時刻 : 2019.04.13 23:43
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ぷーち


東京駅の入場券が140円で、籠原駅の入場券も140円ていうのは、おかしくないかい。

疑問を抱きつつも、君はいつもホームまでお見送りにきてくれる。ここに着くのは、20時。電車が来るのは20時5分。5分のためだけに140円。2週間に一回の出費だとしても、月に換算すると280円。かける12で3360円。それだけの価値があるかしら、と不安になる。

ねえねえ、こんなのあるよ。東京から籠原間のおでかけ券。今度こちに来る時はこれ使たらいいんじない。

そうだね、使おうかな。K君が東京に来る時もこれ使たら、少し安く済むね。

手を繋いだまま、一列になて改札を通る。通路に貼られている鉄道会社の広告が、張り替えられていた。

「異国情緒溢れる旅! ゴールデンウクは長崎県へ! 

君と新幹線に乗て、旅行したことはまだないなあ。運転するの好きだから、とか、これぐらいの距離は全然平気だから、とか言て、君がいつも車でどこへでも連れて行てくれるから。ふと、ずと握ていた君の手が惜しくなる。こんなに柔らかかけ、とさびしくなる。

一段、一段、階段を丁寧に降りていくと、青い夜とひんやりとしたホームが、少しずつ見えてくる。この階段が永遠に続いてくれないかなあ、と思たりする。点字ブロクのでこぼこが靴底に当たた。

電光掲示板には「20時上野行き」の文字。君といられる時間はあと5分。

K君、この前調べたんだけどね、上野行きの最終は0時5分なの。だから、あと4時間は一緒にいられるね。

だめだよ、明日仕事でし。0時5分に帰たら、家着くの3時とかになうでし。無理すると、身体壊しちうから。

忘れ物は大丈夫、と聞く君の声がさびしい。

4時間あれば、140円ぐらいの価値はあるかな、なんてことを思た。
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