てきすとぽい
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第一回てきすと恋大賞
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ブリキの兵隊とうさぎの赤い目
(
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
)
投稿時刻 : 2013.05.27 23:14
字数 : 4099
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ブリキの兵隊とうさぎの赤い目
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
ブリキの兵隊さんは、その昔、やんち
ゃ
な男の子の宝物でした。毎日ブリキのおもち
ゃ
箱の中で寝起きし、仲間たちと勇敢に戦
っ
たり、冒険をしていました。月日が流れ、やんち
ゃ
な男の子はやがてものもちのいいおじいさんになりました。ものもちのいいおじいさんは、かつてのものもちのいいおじいさんにそ
っ
くりなやんち
ゃ
な男の子に、宝物だ
っ
たブリキの兵隊さんをゆずり渡したのでした。
新しいやんち
ゃ
な男の子の家は新しいマンシ
ョ
ンでした。子供部屋にはやんち
ゃ
な男の子とおし
ゃ
まなお姉さんのおもち
ゃ
の仲間がたくさん住んでいました。ブリキの兵隊さんは昔より少し黄みがか
っ
ていましたが、かつての勇敢な兵隊のままでした。でも、新しい子供部屋には色鮮やかなプラステ
ィ
ッ
クの人形や電車や建物があふれていて、やんち
ゃ
な男の子は、ブリキの兵隊さんを古臭い色だと言
っ
て気に入りませんでした。ブリキの兵隊さんは何度かおそろしい牙を持
っ
た怪獣の人形と戦いましたが、やがてほこり
っ
ぽい押入れの中に放り込まれました。
押入れの中にはやんち
ゃ
な男の子やおし
ゃ
まなお姉さんが飽きてしま
っ
たおもち
ゃ
たちがたくさん住んでいました。やんち
ゃ
な男の子のおもち
ゃ
は傷のついたプラステ
ィ
ッ
クの怪獣や戦隊フ
ィ
ギ
ュ
アや乗り物ばかりで、おし
ゃ
まなお姉さんのおもち
ゃ
は綺麗なお人形や可愛らしいぬいぐるみや美少女戦士への変身アイテムばかりでした。暗い押入れの中で、男の子やお姉ち
ゃ
んに飽きられても、みんな仲良く、わきあいあいと暮らしていました。
そんなある日、ブリキの兵隊さんは押入れの隅
っ
こでしくしくと悲しそうな泣き声がするのに気付きました。心配にな
っ
て様子を見に行くと、そこには、可憐で、美しく、おし
ゃ
れに着飾
っ
た、小さなぬいぐるみのうさぎさんが哀しんでいました。
「可愛いうさぎのお嬢さん、どうして泣いているのですか」
と兵隊さんが問いかけると、
「私、寂しいの。お姉さんは私より、も
っ
と新しいうさぎさんに夢中なの」
と言
っ
て、うさぎさんはしくしくと泣き続けました。
兵隊さんが今まで見てきたぬいるぐるみのうさぎたちは、毛が長く、ふくよかで、お
っ
とりした姿のぬいぐるみばかりでした。でもそのうさぎさんは、小柄で、茶と黒の混じ
っ
た毛並みは綺麗に切りそろえられ、スマー
トで、立ち姿も美しく、兵隊さんは、素敵なうさぎさんだなあと思
っ
たのでした。押入れのおもち
ゃ
たちはみんな素敵な仲間でしたが、兵隊さんは、このうさぎさんは特別に、自分の手で守
っ
てあげたいなあと思
っ
たのでした。
うさぎさんは押入れの隅
っ
こでしくしく泣いているばかりだ
っ
たので、兵隊さんは、
「も
っ
とみんなのいるところにきませんか。お話をしませんか」
と誘いました。でもうさぎさんはますます悲しそうに泣くのです。
「私、人に姿なんて見せられないわ。目が取れてしま
っ
たの」
見ると、うさぎさんの両目があるはずの場所には何もなく、ただ綺麗に切りそろえられた毛がぺし
ゃ
んこにな
っ
ているだけなのでした。
「でもね、お嬢さん。あなたはそのままでも十分美しいですよ」
と兵隊さんが言うと、うさぎさんはますますめそめそと泣き出しました。
「そんなことないわ。私、目がないから、お姉さんにも嫌われてしま
っ
たのよ。誰にも会いたくないわ」
うさぎさんはめそめそしくしく泣いているのですが、目がないので涙も出てこないのです。兵隊さんはうさぎさんがとてもかわいそうにな
っ
て、うさぎさんのなくな
っ
た両目を探しに行こうと決意しました。
深夜、おうちの人たちが寝静ま
っ
たころ、兵隊さんは押入れからそ
っ
と抜け出します。押入れの仲間たちみんなが見送りに来てくれます。これまでの兵隊さんの冒険は、昼間にやんち
ゃ
な男の子と一緒にしているものでしたが、今夜からは一人で、真
っ
暗の中を冒険するのです。まだ見ぬうさぎさんの両目をさがしに。
兵隊さんは、暗闇の中、やんち
ゃ
な男の子が脱ぎ捨てた洋服や、片付けそびれた新しいおもち
ゃ
箱、積み木のお城を飛び越えて、うさぎさんの目を探しに行きました。部屋には色んなものが落ちていて、探すのも一苦労です。や
っ
とのことで見つけた、茶色いボタンのようなものを、兵隊さんは持
っ
て帰
っ
てきました。
「綺麗な茶色くて丸い目ですよ」
と兵隊さんが言うと、うさぎさんは泣き出しました。
「茶色なら、私の目じ
ゃ
ないわ。私の目は、赤色なのよ」
とうさぎさんは言うのです。兵隊さんは次の日から赤色の目を探しましたが、一向に見つかりません。
ある日、兵隊さんは、おし
ゃ
まなお姉さんが最近夢中だという、新しいぬいぐるみのうさぎさんを見かけました。新しくぴかぴかふわふわで、真
っ
白な毛並みのうさぎさんでした。そして、まるでルビー
のように綺麗な赤い目をしていました。新しいうさぎさんは確かにかわいらしくて美しか
っ
たけど、兵隊さんは、押入れのうさぎさんは、も
っ
とも
っ
とかわいらしくて、守
っ
てあげたいなあと思うのでした。
その日、偶然にも、兵隊さんは、うさぎさんの目にぴ
っ
たりな、ま
っ
黒でまあるい目を二つ、見つけました。兵隊さんは一目で、これはうさぎさんの両目だなあと思いました。だ
っ
て、兵隊さんは毎日、うさぎさんとお話をして、うさぎさんの両目を探しに行
っ
ているのです。だから、これがこの世で一番うさぎさんの目にぴ
っ
たりな目だと、一目でわかるのです。でも兵隊さんは、押入れに帰
っ
ても、それをうさぎさんに渡せずにいました。だ
っ
て、うさぎさんは、自分の目は真
っ
赤だと思
っ
ているのです。その方がかわいらしくて、赤色の目だ
っ
たら、またお姉さんに気に入
っ
てもらえると思
っ
ているのです。
だから兵隊さんは、黒い目をポケ
ッ
トに入れたまま、毎晩同じようにうさぎさんの両目を探しにいくふりを続けました。兵隊さんを期待して見送
っ
てくれるうさぎさんがかわいそうでかわいか
っ
たからです。
そんなある日、兵隊さんは真昼間に大怪我をしてしまいました。久しぶりにやんち
ゃ
な男の子が押入れから兵隊さんを引
っ
張り出して、乱暴な扱いをしたために、足が片方もげてしま
っ
たのです。ものもちのいいおじいさんの宝物を壊したらお母さんに怒られるからと、やんち
ゃ
な男の子は兵隊さんを直そうともせずに、押入れの奥深くに隠しました。兵隊さんは自分ひとりでは動けなくな
っ
てしま
っ
たので、必死に助けを呼びました。一番最初に気付いたのは、いつも押し入れの一番隅
っ
こにいたうさぎさんでした。
「兵隊さん、ブリキの兵隊さん、どうしたの」
「ああ、うさぎのお嬢さん。昼間に足がもげてしま
っ
て、一人では歩けなくな
っ
てしま
っ
たのです。今日は、あなたの両目を探しに行くことができません」
「なんてことなの! 可愛そうな兵隊さん!」
足がなくな
っ
てしま
っ
たのに、痛いのを我慢して、自分の両目の心配をしてくれる兵隊さんの言葉を聞いて、うさぎさんは胸が痛くなりました。
「せめて、もげた足が見つか
っ
たら、自分で足を治せるのですが
……
」
「わたし、兵隊さんの足を捜しに行きたいわ。でも、目がないから何も見えないの」
うさぎさんは、兵隊さんの力になれない自分が情けなくて、しくしくと泣き出しました。すると、兵隊さんがポケ
ッ
トから何かを取り出しました。
「あなたの探していた赤い目ではありませんが
……
」
それは、ブリキの兵隊さんがず
っ
とポケ
ッ
トに持
っ
ていた、黒い両目でした。うさぎさんは、差し出された黒い両目を受け取
っ
て、自分の目にしました。
うさぎさんは、ずいぶん前に目が取れてしま
っ
てから、ず
っ
と、暗闇の中にいました。兵隊さんから受け取
っ
た黒い目をつけた瞬間、とてもたくさんのものが見えました。優しくしてくれたブリキの兵隊さんは、足がなくな
っ
てとても苦しそうな顔をしていました。
「私、あなたの足を探してくるわ」
そう言うと、うさぎさんはぴ
ょ
んぴ
ょ
んぴ
ょ
んぴ
ょ
ん、押入れから飛び出しました。押入れの仲間たちみんなが見送
っ
てくれました。
押入れの外は、うさぎさんが目をなくす前の世界よりも少しだけ散らか
っ
ていましたが、うさぎさんがおし
ゃ
まなおねえさんのお気に入りだ
っ
た頃のままでした。やんち
ゃ
な男の子が脱ぎ捨てた洋服と、新しいおもち
ゃ
箱と、積み木のお城をぴ
ょ
んぴ
ょ
ん飛び越えて、うさぎさんはブリキの兵隊さんの足を探しに行きました。ずいぶん前に、やんち
ゃ
な男の子に乱暴されて目が取れてしま
っ
た場所を通
っ
たときは、怖い記憶がよみがえ
っ
て足がすくみました。赤い目の新しいうさぎさんを見かけたときは、悲しくなりました。それでもうさぎさんは、ぴ
ょ
んぴ
ょ
んぴ
ょ
んぴ
ょ
んぴ