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第53回 てきすとぽい杯
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文神降臨
 投稿時刻 : 2019.10.19 23:04
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文神降臨
浅黄幻影


 先生方の原稿を取りにいくのが入社三年目の私の仕事である。やと一人で部署と取り次ぐような仕事をさせてもらえた。この業界に飛び込んで流儀・段取りを覚え、顔を覚えてもら……忙しい日々だた。もちろん仕事は始またばかりで、くせのある先生方が毎月のように原稿を出し渋るのだけれども……
 だが今年はどうもそれとは違ているようだ。今年度から担当する先生方のなかでは「A先生は問題はまたくないだろう」といわれていた。原稿に間に合わないことはこれまで一度もなかたいう。やさしい編集長が青い私に理想的な仕事の回し方というのを見せたかたのだろう、と私は思ていた。
 実際、これまでにあた先生方と違い、A先生は本当に落ち着いていた。今時パイプと万年筆なんて、信じられるだろうか? できればデジタルがいいんです……とはいいにくいけれど、先生はこちらが最初に示した期日にしかり間に合わせてくる。きと、一度締め切りが前倒しになれば次の締め切りにも余裕があるのだろう、おそらくそうやて前に前にと持ていていると思ていた。ああ、いい人なんだな……と。
 あるとき、いつものように原稿を取りに伺うと、限界の鍵が開いていた。そういうことはこれまでもあたし、勝手に上がてきなさいといわれていたので入ていたのだけれど、今までとどうも様子が違た。
 家中の電気が消されていて、先生の部屋だけが明るいのだ。ドアは閉まているのに、隙間から青白い光が溢れていた。
 私はなかにいるだろう先生に呼びかけたけれど、答えは返てこなかた。光は強弱を繰り返し、ときどき落雷のような音が聞こえた。
 とてつもなく嫌な予感がしたが、同時に怖いもの見たさでドアを開けてしまた。
 いつものように先生は窓辺のデスクに向かい、万年筆を振ていた。だが先生の身体からは光が溢れ、動かす右腕は神速を越えていた。
「せ、せんせい……
 私がほろりとその名を呼ぶと先生は答えた。
「ワレハ文神ナリ、ワレヲヨブノハオマエカ」
 先生には文神なるものが乗り移ていたようだた。
「は、はい」
 私が答えると、先生=文神は神速の筆記を続けながらこちらを向いて睨み、いた。
「ウヌガノゾミヲイウガヨイ」
 私は息をのんだ。
「げ、原稿が欲しいんですが」
 すると先生が一瞬、戻てきた。
「ああ、それそこにあるから。あと、神が降りてるときには話しちダメだよ」
 私は原稿を手に慌てて家を出た。
 文神とはなんだたのか、私には未だにわからない。
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