第10回 文藝マガジン文戯杯「気づいて、先輩!」
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先輩・過去・未来
(ミラ)
投稿時刻 : 2020.02.09 13:42 最終更新 : 2020.02.16 03:44
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先輩・過去・未来
ミラ


 ある日、俺と同じクラスに転入生がやってきた。
 そいつはクロマニヨン人だった。
 異説もあるが、定説ではヒトの直系の祖先である。
 人類の先輩というわけで、彼のあだ名は先輩に決まった。
 先輩は言動が原始的というか、まあ、はっきり言って馬鹿っぽいので、みんな彼のことを自分たちより一段低い存在と見下していた。
 先輩自身も自分に自信が持てないようだった。
 からかわれたり、いじめられたりしても卑屈に笑っていた。
 俺はと言えば、遠くからそれをただ眺めているだけだった。

 しばらくして、また転入生がやってきた。
 今度の転入生はネアンデルタール人だった。
 ネアンデルタール人についても様々な説があるが、クロマニヨン人より古い時代に属する旧人類であることは確かのようである。
 したがって、あだ名はもちろん、大先輩である。
 先輩と大先輩の関係は微妙だった。
 このクラスの中では先輩のほうが大先輩より先輩なのである。
 そのせいか、先輩は大先輩に対してだけは威張っていた。
 なんというか、器の小さい先輩に、俺は少々失望した。
 いっぽう大先輩の方は、先輩から先輩風を吹かされても、嫌な顔をすることもなく、いつもニコニコと穏やかに笑っていた。
 さすがだ、と俺は思った。

 その日、大先輩が珍しく俺に話し掛けてきた。
「君は他のみんなとは違って、いつも大人しいね」
「俺は一番後輩ですから」
 大先輩の貫禄に俺は自然とかしこまって答えた。
「そうなんだ。でも、これからは君の時代だろ」
 そこへ先輩が割り込んできた。
「おまえ、誰と話してんだよ。あ、こいつは」
 どうやら、こいつとは俺のことのようだ。やれやれ。
「前から気になっていたんだが、こいつはいったい、何なんだ」
「なんだ、知らなかったのかい」
 大先輩が意外そうにいった。
「彼は、」
 そのとき、第三の転入生がやってきた。
 今度の転入生はティラノサウルスだった。
 これはやばい、と俺は思ったが、他の誰も危険に気づいていなかった。
 気づいて欲しかった。
 結局、先輩も大先輩も、他のみんなも食い殺されてしまった。
 助かったのは、食い物に見えなかった俺だけである。
 やがてティラノサウルスも飢えて死に、俺だけが取り残された。
 次の転入生がいつ来るのか、俺にはわからない。
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