第55回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動8周年記念〉
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他人の二人が意思疎通するまで
投稿時刻 : 2020.02.15 23:23
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他人の二人が意思疎通するまで
浅黄幻影


 私たち二人は、部屋に閉じ込められていた。
 気付いていたら二人して部屋に倒れていて、起き上がるときも、お互いに声をかけようとしてもまたく音が出なかた。この部屋のなかでは音が出ないらしい。たいした無音装置でもあるのだろうか? それとも私の耳に穴でも開いてしまたのだろうか? あ、もともと開いていた。
 声が出ずに何もわからない私たちは、壁やドア、天井、部屋の隅々まで調べてみたけれど、結局何も見つけられなかた。
 そして私たちの試行錯誤が始また。ボデランゲージだた。私は自分や相手を指さしながら言いたいことを伝えようとしたのだが、伝わらなかた。名前も、どこの誰かもわからず(少なくとも日本人ではない)、伝えるべきことさえ掴めないような状況だ。バラエテ番組の爆笑効果音なしでボデランゲージを続けるのは精神的に苦痛があた。なれないうえに、何も得るものがないこの状況。せめて効果音があればとわけのわからないことを考えたが、笑われたところで仕方ない。その上、ここは強制的に無音だた。
 失敗に終わた後、彼は腕を組んで悩ましい顔をした。やがて何か思いついたのだろう、彼は人差し指を立てて私に合図した。彼の目は輝いていたが、なぜか眉間の皺は深かた。むしろ深くなていく気がした。
 私を後ろに向かせた彼は背中をつついたと思うと、そこに何かを書いていた。そうか、字か! 私は指を当てられながら必死に文字を拾ていた。最初の文字は……まあ、日本語ではないな、だろうね……んー、漢字でもないな……英語か? いや、どうか……だめだ、わからない!
 よく考えれば背中に書く必要もなく、彼が私の手のひらに書いたのを筆順もしかり見たのだが、やけに横線や点の多い文字ばかりだし、私からも書いてみたものの、やはり通じない。英語でも通じなかた。
 彼の深刻な顔はますますもてひどくなていた。具合が悪いのだろうか、顔色も優れない。どこかでここを見張ている誰かはこの状況をどう見ているのだろう? いや、誰も見てないかも? いや、それでももし彼が倒れてでもしたら、放ておけるのか。音無しく黙たままでいるのだろうか? 音が無いだけに。
 私たちは振り出しに戻た。彼は彼は頭を何度か左右に振た後、再びボデランゲージを試み始めた。
 彼は私の靴を指さし、それから鼻を摘まんで、頭をつついた。……なるほど、私の足が臭いと?それでさきから頭が痛くて? つらい顔を?
 私は咄嗟に「黙れ!」と叫びそうになたが、もともと二人はずと黙ていたのだた。
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