世界征服を目的に結成された秘密結社「シャドーウェーブ」は、手始めに日本を侵略することにした。日本を標的にするのは歴史上、数々の悪の組織が歩んだ道だからだ。
「首領、テンタクルという36年前の組織が子どもたちのおやつを盗んで困らせています」
「なるほど。子どもたちに理不尽さを植え付けて、将来悪の道に抵抗をなくさせる作戦か」
　星雲仮面マシンマンのDVDを観ながら、幹部たちはほくそ笑む。
「子どもの鳴き声を聞いてダイヤモンドを生産する像があるそうです。軍資金を調達するには必要かもしれません」
　兄弟拳バイクロッサーの敵組織デスターは子どもたちを泣かすことに全力をかけている。子どもをターゲットにすれば国家の根幹を揺るがせられる。
「子どもが乗ったバスをジャックして身代金を要求しています」
「まずは拠点の設営と資金調達か。この世界には仮面ライダーV3は存在しない。先人に習って子どもたちから狙うぞ」
　東京湾の海底に停泊していたシャドーウェーブの潜水艦は、都心に住む子どもたちを人質にするため浮上を開始した。東京というところが都心らしいが、沿岸には新都心と名付けられた場所もあった。新しいというからにはそこが日本の最重要拠点なのだろう。
「あの円形の建物から人間たちの声が聞こえるぞ」
　潜望鏡に白と水色の建築物が映る。幹部たちには集会場のように見えた。奇しくもこの日、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手は本拠地ZOZOマリンスタジアムのオリックスバファローズ戦で日本人最速168Kmを記録した。
「あの細長い建物はなんだ？」
　アパホテル＆リゾートベイ幕張の鉄板焼七海は黒毛和牛コースがおすすめだ。
「ツインビルが２つもあるぞ」
　ワールドビジネスガーデンにあるレストランで、著者は殺人事件で捕まったイラン人と一緒に働いていたことがある。
「建物などどうでもいい。バスを探すのだ」
　海浜幕張駅からは様々な送迎バスが発着している。マリンスタジアム行きはもちろん、新習志野にあるイオンモールや近隣のホテル行きまで。もちろん海岸沿いに広がる工場への送迎も。
　シャドーウェーブの工作員が乗ったバスはZOZO物流倉庫行きだった。憂鬱な顔で俯いている従業員たちと共に、彼らは静かに揺られていた。
「どこの派遣会社ですか？」
「あ、シャドーウェーブです」
「んー、新しいところかな？　まあいいや。この紙に名前を書いて、あそこにいる班長さんのところに集まって指示を聞いてくださいね」
　連れて行かれた倉庫の奥には大量の洋服が積まれていた。
「とりあえず、男物女物、サイズで分けてください」
　20人いたシャドーウェーブの工作員は、仕分け、タグ付け、袋詰の3工程に分かれて作業を開始した。
　いつ終わるともしれない単調な作業が夜まで続く。帰りのバスの時間までに間に合うのだろうか？　こういった地道な作業の積み重ねが経済を動かすのだろうか？　著者はもう何を書いているのか自分でも分からなくなっていた。

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