第63回 てきすとぽい杯
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パワーオブフォー
投稿時刻 : 2021.06.19 23:36
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パワーオブフォー
犬子蓮木


 すいている電車に、高校生が4人乗ていた。男子が2人、女子が2人。この車両には他に乗客がいない。地方の夕方の電車だた。4人は皆、席に座ている。ひとつの長椅子に男子ペア、向かいの長椅子に女子ペアが座ており、ペアの間も適当にあいていた。すいているので、自由の幅をとて座れるのだ。
「え、それ、まじ? やばくね?」三輪田白水郎が言た。
「うそでし」山野さおりが言た。
「本当だて、音楽の力すごいんだよ」君鹿舞が真剣な表情で言た。
「嘘」九田英治が目をほそめる。
「なんだよ」三輪田白水郎が笑う。
「今日さ授業で男子がふざけてたの」君鹿舞がさらに真剣な表情で言た。
「それな」九田英治が笑た。
「そしたらいきなりガン!!」君鹿舞が両手を振り下ろしてみせる。
「ないわー。おまえまじないわー」三輪田白水郎が足をばたつかせる。
「みたいな」君鹿舞が手を広げて言た。
「こわ……」山野さおりが横に向けていた体を後ろにそらしてみせる。
「でもさ、やぱりバイトは大事なわけじん。小遣いすくねーし」九田英治が言う。
「それはそうだけど校則で禁止じん」三輪田白水郎が言た。「さきのはまあ、ねーとしても」
「いきなりキレるのはないよね」山野さおりが言う。
「ないと思うじん?」九田英治がずいと言た。
「え?」三輪田白水郎が声をもらす。
「まあ気持ちはわかるけどね」君鹿舞があきれたように言た。「ほんと、ひどかたから」
「男子どもアホだからね」山野さおりが言う。
「ほんとほんと」九田英治が言た。「先生も言てた」
「それはさすがにやるなよてことするしね」君鹿舞が言た。
「それなら俺もやてみたいけど……」三輪田白水郎が少し小さな声で言う。
「まじありえない」山野さおりが言た。
「まあ、嘘なんだけどね」九田英治がおどけて言た。
「おまえ、まじふざけんなよ」三輪田白水郎がふざけてパンチする。
「はあ、それにしても音楽の力、すごかたな」君鹿舞が言た。
「やめろて、それはやべーよ」九田英治が言た。「世界滅ぶ」
「それで結局、どうなたの?」山野さおりが尋ねた。
「うるせー、こちは真剣なんだよ」
「静かになて、演奏開始よ。もう歌なんて空気じないけど」君鹿舞が言た。
「痛い、痛いわ」九田英治が笑う。
「あははは」山野さおりが笑た。
 電車が駅に着いた。4人は立ち上がり、開いた扉から駅に降りた。
「どちだけ」山野さおりが言う。
「北口」君鹿舞が答える。
「そちじねーよ」三輪田白水郎が九田英治の襟首をつかんでひぱる。「映画館はあち」
「南口か」九田英治が笑う。
 九田英治と三輪田白水郎が南口に向かて歩いていく。
「かわいい服あればいいなあ」山野さおりが言た。
「なんでも似合う」君鹿舞が言う。
 山野さおりと君鹿舞が北口に向かて歩いていく。
「それにしてもバイトどうしようかなあ」三輪田白水郎が言う。
「退学が怖いか?」九田英治が脅すように言た。
「退学は嘘なんだろ。さすがにそこまではねーべ」三輪田白水郎が言う。
「どうかなー」九田英治がおどけて言た。「あるかもよー
 男子2人が南口への階段に消えていた。九田英治の笑い声と三輪田白水郎の怒るような声が響いていた。
 女子2人が北口への階段を登ている。
「どんな服、買う?」
「音楽の力みたいなのは?」君鹿舞が言た。
「えー無理、ああいうのは好みじない」山野さおりが言た。
「わたしは結構、好きなんだけどなあ」君鹿舞が言う。
「いいんだけど、ちとかこ良すぎていうかさ」山野さおりが言た。「音楽の力武先生みたいな服」

                                           <了>
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