てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
第6回 てきすとぽい杯〈途中非公開〉
〔
1
〕
«
〔 作品2 〕
»
〔
3
〕
〔
4
〕
…
〔
13
〕
ありし日の終わりを作ること/ソーシャルキル
(
犬子蓮木
)
投稿時刻 : 2013.06.15 23:14
字数 : 1735
1
2
3
4
5
投票しない
感想:3
ログインして投票
ありし日の終わりを作ること/ソーシャルキル
犬子蓮木
人間を殺すには何が必要だ
っ
て?
ナイフに銃に鈍器やなんか、うん、素手でも殺せるね。だけども
っ
と良い方法があるんだ。殺しても捕まらない。罰も受けなくて良い。
人間を殺すには空気だけあればいいんだ。
え
っ
、空気は生きるのに必要だろ
っ
て?
わか
っ
てないなあ。必要なものはいつだ
っ
て毒になる。そして君と僕の空気は定義が違う。ごめん、そんな顔しないでよ。言葉遊びさ。ただのね。
僕らがやるのは、緩慢な他殺。
気になる彼女を空気で殺すのさ。
ソー
シ
ャ
ルという空気でね。
かわいそう? そうだな、たしかにかわいそうだ。でも、世の中そんなもので、も
っ
とかわいそうなことであふれている。じぶんの死の瞬間を選べるなんて、それはそれで幸せじ
ゃ
ないかな。
そう。
彼女は自らを殺すことを選ぶのだからね。たとえそれが僕らが用意したレー
ルの終着点であ
っ
たとしても脱線した
っ
ていいんだから。
世の中は複雑でなにかの因果でどこかが動く。僕はそれを知
っ
ているし、誰だ
っ
てわか
っ
ている。ただち
ょ
っ
とだけ計算が難しいだけだ。ち
ょ
っ
とだけめんどうだから誰もしないだけだ。わか
っ
ていてもやめようとしない人がいるだけだ。
僕みたいに。
☆
いじめだなんてものが、なんであるのだろうと思う。
わたしは、中学生で、いじめられている。
き
っ
かけは些細なことで、わたしは覚えているけれど、みんなは忘れているような気がする。以前は抵抗して、こんなバカなことやめなよ
っ
てはむか
っ
た。なんでこんなことするの
っ
てく
っ
てかか
っ
た。
でも言われたんだ。
「因果応報
っ
て奴だよ」
っ
て。
バカみたい。そんな言葉で。たしかに最初はわたしが悪か
っ
たかもしれない。でも、なんでず
っ
とこんな目にあわなければいけないのかはわからない。
神様がいて悪いことが計量できるのなら、き
っ
とみんなのほうが罪が重いと思う。けれど、そんなものを計る機械が存在しないから、感じていても無視するんだ。友達だ
っ
た子も先生もあいつもみんなみんな。
一見すればなにもない。
深く関わればいじめられているのがわかる。
体に傷はない。
心はもう
……
存在を信じたくない。感情のないロボ
ッ
トになりたい。ロボ
ッ
トが人間になりたいなんて言葉はま
っ
たく意味がわからない。
人間なんてこんな酷い生き物なんだよ。わたしは人間になんて生まれてこなければよか
っ
た。
朝、登校して教室に入ると挨拶が飛び交う。わたしが教室に入
っ
てきたのに、わたし以外にみんなが挨拶をするのだ。くだらない遊び。みんな死んじ
ゃ
えばいいのに。
わたしははじ
っ
この席に座
っ
て。鞄から教科書を出す。学校に来たくない。でも、親は休むなんてことを許してはくれない。わたしはもうどうしていいかわからない。
「二人組を作
っ
てくださいね」
授業中。またどうしようもない言葉が聞こえてくる。わたしはもうず
っ
とあぶれていて、先生もいつも諦めてどうにかごまかしている。
や
っ
ぱり一人あぶれたわたし。どうしようもなく、恥ずかしく、それでもいつものように先生に言おうとした。そのとき、
「——さん、一緒にやろうよ」
隣の男子がわたしに声をかけてきた。その子はいつもいじめにほとんど関わらず、ひどいこともしないそんな人だ
っ
た。クラスでも人気のある男の子だ
っ
た。
クラス中がざわつく。
その子をはやしたてる声。
でも、その子はそんな周りに負けず、ほほえんでくれた。
クラスの女子がわたしを睨み付けるのがわか
っ
た。
「うるさい奴らはほ
っ
とこう」
わたしは泣きだした。うなずくこともできなか
っ
た。
教室を飛び出す。その子には悪いと思う。でも我慢できなか
っ
た。涙があふれてしまう。なんでやさしくしてくれたんだろう。きまぐれ? いつもわたしはその子を見ていた。まさかこんなにやさしくしてもらえるなんて思わずに、ただ別の世界の幸せな人みたいに想
っ
ていた。
わたしは今、そんな世界にち
ょ
っ
とだけ許されて、幸せをわけてもら
っ
たように思えた。
階段をあが
っ
ていく。
これをき
っ
かけにして明日から何かがかわるわけでもないことはわか
っ
ていた。嫉妬もあれば、口実にだ
っ
てなる。彼はわたしを助けてくれる王子様でもない。わたしがいたら迷惑で、彼まで巻き込まれてしまうかもしれない。
だから、このささやかな一瞬の幸せを抱いて、もう終わりでもいいや
っ
て
……
。
☆
ほらね。
←
前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感想:3
ログインして投票