第6回 てきすとぽい杯〈途中非公開〉
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ありし日の終わりを作ること/ソーシャルキル
投稿時刻 : 2013.06.15 23:14
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ありし日の終わりを作ること/ソーシャルキル
犬子蓮木


 人間を殺すには何が必要だって?
 ナイフに銃に鈍器やなんか、うん、素手でも殺せるね。だけどもっと良い方法があるんだ。殺しても捕まらない。罰も受けなくて良い。
 人間を殺すには空気だけあればいいんだ。
 えっ、空気は生きるのに必要だろって?
 わかってないなあ。必要なものはいつだって毒になる。そして君と僕の空気は定義が違う。ごめん、そんな顔しないでよ。言葉遊びさ。ただのね。
 僕らがやるのは、緩慢な他殺。
 気になる彼女を空気で殺すのさ。
 ソーシャルという空気でね。
 かわいそう? そうだな、たしかにかわいそうだ。でも、世の中そんなもので、もっとかわいそうなことであふれている。じぶんの死の瞬間を選べるなんて、それはそれで幸せじゃないかな。
 そう。
 彼女は自らを殺すことを選ぶのだからね。たとえそれが僕らが用意したレールの終着点であったとしても脱線したっていいんだから。
 世の中は複雑でなにかの因果でどこかが動く。僕はそれを知っているし、誰だってわかっている。ただちょっとだけ計算が難しいだけだ。ちょっとだけめんどうだから誰もしないだけだ。わかっていてもやめようとしない人がいるだけだ。
 僕みたいに。

   ☆

 いじめだなんてものが、なんであるのだろうと思う。
 わたしは、中学生で、いじめられている。
 きっかけは些細なことで、わたしは覚えているけれど、みんなは忘れているような気がする。以前は抵抗して、こんなバカなことやめなよってはむかった。なんでこんなことするのってくってかかった。
 でも言われたんだ。
「因果応報って奴だよ」って。
 バカみたい。そんな言葉で。たしかに最初はわたしが悪かったかもしれない。でも、なんでずっとこんな目にあわなければいけないのかはわからない。
 神様がいて悪いことが計量できるのなら、きっとみんなのほうが罪が重いと思う。けれど、そんなものを計る機械が存在しないから、感じていても無視するんだ。友達だった子も先生もあいつもみんなみんな。
 一見すればなにもない。
 深く関わればいじめられているのがわかる。
 体に傷はない。
 心はもう……存在を信じたくない。感情のないロボットになりたい。ロボットが人間になりたいなんて言葉はまったく意味がわからない。
 人間なんてこんな酷い生き物なんだよ。わたしは人間になんて生まれてこなければよかった。
 朝、登校して教室に入ると挨拶が飛び交う。わたしが教室に入ってきたのに、わたし以外にみんなが挨拶をするのだ。くだらない遊び。みんな死んじゃえばいいのに。
 わたしははじっこの席に座って。鞄から教科書を出す。学校に来たくない。でも、親は休むなんてことを許してはくれない。わたしはもうどうしていいかわからない。
「二人組を作ってくださいね」
 授業中。またどうしようもない言葉が聞こえてくる。わたしはもうずっとあぶれていて、先生もいつも諦めてどうにかごまかしている。
 やっぱり一人あぶれたわたし。どうしようもなく、恥ずかしく、それでもいつものように先生に言おうとした。そのとき、
「——さん、一緒にやろうよ」
 隣の男子がわたしに声をかけてきた。その子はいつもいじめにほとんど関わらず、ひどいこともしないそんな人だった。クラスでも人気のある男の子だった。
 クラス中がざわつく。
 その子をはやしたてる声。
 でも、その子はそんな周りに負けず、ほほえんでくれた。
 クラスの女子がわたしを睨み付けるのがわかった。
「うるさい奴らはほっとこう」
 わたしは泣きだした。うなずくこともできなかった。
 教室を飛び出す。その子には悪いと思う。でも我慢できなかった。涙があふれてしまう。なんでやさしくしてくれたんだろう。きまぐれ? いつもわたしはその子を見ていた。まさかこんなにやさしくしてもらえるなんて思わずに、ただ別の世界の幸せな人みたいに想っていた。
 わたしは今、そんな世界にちょっとだけ許されて、幸せをわけてもらったように思えた。
 階段をあがっていく。
 これをきっかけにして明日から何かがかわるわけでもないことはわかっていた。嫉妬もあれば、口実にだってなる。彼はわたしを助けてくれる王子様でもない。わたしがいたら迷惑で、彼まで巻き込まれてしまうかもしれない。
 だから、このささやかな一瞬の幸せを抱いて、もう終わりでもいいやって……。

   ☆

 ほらね。
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