てきすとぽい
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かいだん
(
めぐる
)
投稿時刻 : 2013.09.04 05:52
字数 : 1146
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かいだん
めぐる
私の家の近くには小さな神社があります。
石の階段み
っ
つほどの少しだけ高い所に建てられたもので、縁日などの祭りも催されずそこにあるな、くらいのこじんまりとした神社です。
最近、犬の散歩でよく寄ります。
そこでなんとなく手を合わせて、今日はち
ょ
っ
といいことがあ
っ
ただとか、なんだか調子が悪いだとか誰にでもなく報告をしたりして。たまー
に小銭を持
っ
てお賽銭を入れてみたりもします。
何度かそういうことを繰り返していくうちに、ワンコもそのコー
スを覚えたのか自然と石の階段を上るようになりました。
時々境内にネコがいる時なんかは必死に追いかけようとしますが、リー
ドを引
っ
張ると案外素直に諦めてくれます。
八月も終わりに近づいてセミの鳴き声が大分落ち着いてきてある日の夕方のことです。
その日もいつものように、神社を通るルー
トで散歩を始めました。
ワンコはスンスンと地面の匂いを嗅ぎながら、生温かいアスフ
ァ
ルトの上を尻尾を揺らして歩きます。
神社が近づくと、ワンコがわざとらしく無視するように神社の向こうの道へ行こうとするのです。
なんだよド忘れでもしたのかと石の階段を一段上
っ
たときです。
その先へ行きたがらないのです。
ネコを追いかけるのが好きなこいつでも時々強そうなヤツに出くわすと、こうして進むのをしぶる時があります。
今日はそいつが境内にいるのかと思い軽く境内を見渡しましたが視界にネコはいません。
どこからか匂いがするのかもしれませんが、人間の嗅覚ではもちろん分かりません。
姿も見えないのに変なこともあるもんだと、いつも通りに手を合わせて「ワンコが今日も元気です」とつぶやきました。
この後はどのルー
トで歩こうか考えつつ鳥居をくぐ
っ
てから、石の階段にさしかか
っ
た時です。
後ろからドン!と押されるような力を感じ、私は派手に転げ落ちてしまいました。
幸いリー
ドは手放さず、ワンコは近くにいるようです。
起き上が
っ
て周りを見渡しましたが、人はもちろんネコもいません。
久しぶりにつく
っ
た擦り傷がヒリヒリ痛み、足もくじいてしま
っ
たのかジンジンと痛みます。
どうにも怖くな
っ
てしま
っ
て、まだ物足りなさそうなワンコを引
っ
張
っ
て家へ戻りました。
そんなことがあ
っ
て神社を避けて散歩をする日が続き、気候も大分涼しくな
っ
てきました。
今日はやけにワンコがぐいぐい進むなと思
っ
たら、あの神社へ向か
っ
ているようなのです。
またあんなことがあるんじ
ゃ
ないかとリー
ドを引
っ
張りますが、違う道へ行こうとしても首をしめられながら必死に神社を目指そうとしています。
往路こそあの時のように何事もなく階段をみ
っ
つのぼり、「嫌な予感しかしません」と鈴を鳴らしてから手を合わせます。
鳥居の先はどうなるでし
ょ
うか。ワンコは私の顔を見上げては、出口の階段へ向か
っ
て私を引
っ
張ります。
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