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てきすと怪
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十物語
 投稿時刻 : 2013.09.15 22:56 最終更新 : 2013.09.16 11:30
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- 2013.09.16 11:30:03
- 2013.09.15 23:12:49
- 2013.09.15 22:56:39
十物語
永坂暖日


【第一話 叫び声】
 これはわたしが高校生の時、部活の先輩から聞いた話です。
 うちの学校は、物理室や音楽室、美術室を一つの校舎に固まてあるんですけど、授業がある昼間はともかく、放課後は音楽室と美術室以外、あまりひとけがないんですよ。物理部や化学部は、うちの学校、なかたから。
 先輩はある日、物理室に忘れ物をしたそうです。部活が終わたあとに気が付いたから、周りはもう真暗。物理の先生に鍵を借りて、物理室へ向かたそうです。忘れ物を取た先輩は、鍵をかけて職員室へ行こうとしました。その時に、誰かが叫ぶ声が聞こえたそうです。物理室は一階にあて、声は上から降てきた。先輩は驚いて、でも美術部や吹奏楽部の誰かがまだ残ていたのかもしれないと思い直したそうです。でもちと不気味だから足早に廊下を進んでいたら、また叫び声。
 高校生くらいの男の子たちが、よくふざけて大声出したりするけど、それとは違て、苦しそうだたそうです。先輩はただごとではないかもしれないと急いで職員室へ行て、先生を連れてきました。
 そもそも、先輩が鍵を借りた時点で美術部も吹奏楽部もとくに帰た後で、誰もいなかたらしいんですよ。
 でも、誰かが教室ではなくて廊下とかにはいたかもしれない。先生と一緒に一通り見て回たけれど誰もいなかたから、そういう結論になりました。
 次の日、先輩は友達にそのことを話したら、友達から、こんな話を教えられたそうです。
 昔、化学の実験中に、床に落とした消しゴムを拾おうと女生徒が身を屈めた時、隣にいた生徒が硫酸をこぼしてしまい、それが女生徒の顔にかかるという事故があた。彼女の顔の右半分は焼け爛れて右目も失明し、事故から数月後に校舎から飛び降り自殺をした。更にその一月後、硫酸をこぼしてしまた生徒も自殺した。
 そういう話でした。
 叫び声はその女生徒のものか、と先輩はぞとしたそうですが、友達はそうではなく、硫酸をこぼした生徒の声だと言うのです。
 その生徒は硫酸を自分の顔にかけて、とても苦しそうな声を上げながら校舎から飛び降りたのだそうです。

【第二話 消えたバイト仲間】
 お化け屋敷でバイトをしていた友人から聞いた話です。
 大型シピングモールの催事場で、夏休みの間だけ営業していたお化け屋敷で、お化け役のバイトをしていたんです。お岩さんみたいなお面をかぶて血糊のついた着物を着て、その時の写真を見せてもらいましたけど、明るいところで見たら結構チープなんですね、ああいうの。でも、暗いところで、しかもおどろおどろしい雰囲気満点のところで見たら、それなりなんでしう。大概みんな驚いて悲鳴を上げたそうです。
 お化け屋敷て、前の人に追いつかないようにお客さんを入れますよね。それに、次から次にお客さんが来るわけでもないから、時には待ちぼうけになることもある。でも、二時間おきに交替だから、それほど辛くもなかたそうですよ。わたしはちと無理かな。真暗で怖い雰囲気の中で一人というのは。
 交替する時は、次の人が持ち場に来て入れ替わるようになているけど、ある時、まだ二時間経ていないのに交替の人が来たことがあたそうなんですよ。友人は早いなと思いながらも交替した。ところが、バクヤードに戻ると、何で勝手に出てきたんだと怒られたんです。友人は、当然ながら交替が来たからて答えますよね。でも、誰も行ていないて言うそうなんです。みんなですよ。よく見れば、友人の次にお化け役をする人も、そこにいる。
 友人はおかしいと思いながら、そして、まさかていう嫌な予感を抱えながら、持ち場に戻たんですね。後ろから肩を叩かれて、交替だよて言われたのを友人ははきりと覚えていたそうです。でも、戻てみると誰もいない。
 いたい誰が友人と交替したのか、その人は何処へ行てしまたのか、またくもて分からないそうです。

【第三話 丁字路の電柱】
 何処だたのか場所は忘れてしまたけど、丁字路だたのは確かです。
 住宅地の中にあて、道幅も大して広くなく、見通しも悪い丁字路です。もちろんミラーはあるけど、交通事故が多い。そのせいで、呪われた丁字路、なんて呼ばれてるらしい。で、その丁字路に電柱が立てるわけですよ。丁の字の下から歩いていくとするじないですか。そうすると横棒にぶつかりますよね。その、丁字路の左側の角に、電柱があるわけです。
 それでね、昔、自転車に乗ていた子供が丁字路を右に曲がろうとしたそうです。そこに右から車が突込んできて、子供は車と電柱の間に挟まれて、即死だたらしい。かわいそうに。近所の人たちもかわいそうに思て、電柱の根元にお菓子とかジスとかをお供えしたそうです。
 それからしばらくした頃、その電柱の陰から丁字路をのぞき込む子供がいる、という話が広またそうです。警戒するように、電柱から顔をのぞかせているんだとか。ただ、見えているのは顔の半分だけらしい。いくら子供といても、電柱の陰に体が全部隠れるわけではないですよね。だけど、顔の半分しか見えない。しかもね、大人の背丈よりも高い位置からのぞいているらしいんですよ。
 そこで死んだ子供だろうというのが、もぱらの噂です。高いところから見た方が見晴らしがいいからて。

【第四話 おねだり】
 僕が高校生の時の話です。
 生物室にあるホルマリン漬けの中に、大きな蛙がいたんですよ。その蛙は何年も前に生物室で飼われていたんだそうです。当時の生物の先生がとても可愛がていて、毎日手ずから餌をあげていたらしく、蛙が死んだ時に先生はとても悲しがたそうです。よほどその蛙が好きだたのか、ホルマリンに漬けて保存するくらいに。
 僕が在学していた頃には、すかり色褪せて真白になてましたけど、その蛙が動くらしいんです。前を通りかかると、まるで餌をねだるように口を動かす。でも、誰にでもそうするのではなくて、蛙を可愛がていた先生と同じ、白衣を着た男が通りかかた時だけ。
 それを確かめてみようという話になて、放課後、白衣を着て蛙の前を通てみたんです。でも、動かない。そんなモンだよなと友人たちと言い合いながら帰ろうとした時、僕は、本当に動かないかなと大した期待もせずに、蛙の入ている瓶をつついたんですよ。おい、餌はほしくないのか、なんて言て。
 すると、蛙の目が、ぎろりと動いたんです。それまで焦点など合てなさそうに上を向いていた目が、間違いなく僕を見たんです。僕は叫びましたよ。恥ずかしながら、腰も抜かしてしまた。友人たちが驚いて振り返り、どうしたのかと聞かれたから、ありのままを話しました。でも、蛙の目はまた上を向いていて、友人たちには僕が彼らを驚かそうとして叫んだ、としか思われなかた。逆の立場だたら、たぶん僕もそう思たでしう。
 でもね、確かに蛙は僕を見たんです。蛙を可愛がていた先生じないと分かたから、目をそらしたんだと思います。そのあと、何度も白衣を着て蛙の前を通ることはありましたよ。でも、蛙はもう二度と僕を見なかた。

【第五話 山道を歩く女】
 教師の父が体験した話です。
 転勤になた父の新しい赴任先は、ダムよりも更に山奥にある集落の学校でした。いわゆる僻地ですが、自宅から車で三時間ほどのところだたので、父は単身赴任することになりました。往復六時間なので、ほぼ毎週末自宅へ帰てきていて、あまり単身赴任という感じもしませんでしたけど。
 いつものように週末を自宅で過ごした父は日曜の夜、赴任先である集落へ向けて車を走らせていました。水力発電のダムがあるような山奥なので、道路の街灯は少なく、あても暗く、民家は集落以外の場所にはありません。当然、歩いている人などなく、そもそも車とすれ違うことも滅多にないような場所です。
 集落まであと三十分もあれば着くという時、道路脇を歩いている人を見たそうです。山奥で、とくに日没を過ぎている夜ですよ。既にダムも通り過ぎていて、この先にあるのは集落だけ。それにしたて、車で三十分はかかるような場所です。そんなところを、白ぽいワンピースを着た女性が集落の方へ向かて歩いていたんです。
 父は怪訝に思いながらも、車に乗ているものですから、あという間にその横を通り過ぎました。バクミラーをちらりと見ても、すぐに女性の姿は闇に飲み込まれて見えなくなた。集落にああいう女性がいただろうかと首を捻りながらも、父はそれ以降は何事もなく赴任先の家にたどり着きました。
 話はそれだけです。父はそのあとまた転勤になるまで、二度と女性の姿を見かけることはなかたし、そういう怪談話もついに一度も聞くことはなかたということです。集落の誰かが何かの事情で歩いていたのだろう、というのが父の見解です。
 ただ、去年、父の赴任先へ行く途中にあるダムから、女性の白骨化した遺体が見つかた、というニスがありました。
 それだけの話です。

【第六話 祖父からの手紙】
 使てないフリーメールアドレスて、誰でも一つや二つ、持てますよね。何かのきかけで取たはいいけど、メインで使ているわけじないからいつの間にか存在を忘れてしまう、そんなやつ。わたしもいくつか持ていて、でもある日ふと、それを整理しようと思い立ちました。
 まあ、長年放置していたから迷惑メールが山のようにあるわけです。いちいち件名に目を通しもしない。ほとんど使ていないアドレスですからね。
 でも、あるメアドの受信ボクスを見た時、他の迷惑メールとはちと違う件名が目に飛び込んできました。泣き坊主へ、ていう件名でした。
 あれと思いましたよ。泣き坊主て言うのは、祖父の、わたしの呼び方だたんです。わたしは小さい時は泣き虫で、大人になてからも両親や祖父母にそのことをよくネタにされていました。祖父は、いつもわたしを泣き坊主と呼んでいたわけではなくて、時々からかうようにそう呼んでいたんですけど、でも、そんな呼び方をするのは祖父だけでした。
 しかも、そのメールの着信日よりもずと前に、祖父は亡くなているんです。それ以前に、祖父はそのメアドを知らないはずだし、パソコンなんてほとんど触たこともない人でした。
 たまたま、そういう件名の迷惑メールが来ただけかもしれない。でも、泣き坊主という響きが懐かしく、ついそのメールを開封してしまいました。
 幸いウイルス感染とかすることはなくて、それどころかね、そのメール、亡くなた祖父からだたんですよ。信じられないでしう。わたしも、信じられない。でも、書いてある内容からすると、差出人はどうしたて祖父なんですよ。しかも、亡くなたあとに書いてある。
 嘘みたいでしう。でもね、祖父曰く、あの世でパソコンを習て覚えたんだそうです。それで、わたしにメールを出してみたて書いてあるんですよ。どうやてそのアドレスを知たのかとか、あの世からメールが来るのかとか、そもそもあの世なんて本当にあるのかとか、色々と突込みたいことはあるんですけど、祖父からのメールだた。
 わたしは、でも半信半疑で、そのメールに返信しました。ドメインは聞いたこともないもので、いくら検索しても引掛かりもしませんでしたけど、宛先不明で返ては来なかた。ついでに言うと、祖父からの返事も返てきませんでした。すぐにはね。
 返てきたのは、今年のお盆前。祖母と二人で帰るからちんと迎え火をしろとか、お供えの酒はもと良いものにしろとか、早く結婚しろとか、そんなことが書いてありました。
 本当に死んだ祖父からのメールかどうか、実のところは分かりません。でも、わたしは祖父からのものだと思ています。
 そういうことがあても、いいじないですか。

【第七話 おかえり】
 わたしが何年か前まで住んでいたマンシンは、単身用と家族用の部屋があたんですよ。わたしは、当時まだ独身だたので単身用に住んでました。
 マンシンの入り口はオートロクで、入てすぐのところは特に何もないホールになていました。奥にエレベーターが二基あるだけで、観葉植物も何もない、本当に素気ないホールでした。
 マンシンは十階建てでほぼ満室だたと思いますけど、あんまり人には会わないんですよね。わたしが仕事で帰るのが遅かた、というのもあると思いますけど。
 夏の終わり、ちうど今くらいの季節のことです。いつものように遅くまで残業してマンシンに帰り着いたんですけど、ちうどエレベーターが一機、一階にいました。待たなくてラキーたと乗り込もうとした時、おかえり、て言う声を聞いたんですよ。小さな、ちと舌足らずの女の子の声でした。驚いてあたりを見回したけど、女の子なんて何処にもいません。ホールには隠れるような場所もないから、どんな小さな女の子がいたとしても、いれば絶対に見つけられたはずです。だけど、誰もいない。
 ぞとしました。だて、はきりと聞いたんですもの。疲れていたせいなんかじないです。
 わたしはすぐにエレベーターに飛び乗て、自分の部屋に駆け込みました。幸い、声は一度聞いたきり二度と聞くことはなくて、一月も経た時にはそんなこと、すかり忘れてました。
 その出来事を思い出した、というか声の主を知たのが、一月後です。
 わたしは単身用の部屋に一人で住んでましたけど、たまに二人とかで住んでいる人たちもいました。1LDKだから、小さな子供のいる夫婦くらいなら、多少手狭でも住めないことはなかたんです。
 わたしの下の階に、母一人子一人で住んでいる家族がいたそうです。ところが、その部屋の子供が、亡くなているのが見つかたんです。第一発見者はその子の母親。一月以上、家を空けていたそうです。ようやくしべれるようになた女の子で、母親の帰りをずうと待ていたんでしうね。玄関先で倒れていたそうです。
 もちろん、母親は逮捕されました。ニスで顔写真を見たんですけれど、わたしと同じ歳で、背格好も似ているようでした。彼女は、子供を家に置いて恋人の家にいたらしいです。食料は置いていたそうですが、そういう問題ではないですよね。
 わたしが夏の終わりに聞いたおかえりという声、あれはきと、あの女の子だたんだろうと思います。女の子の母親と背格好が似ていたから、お母さんが帰てきたと思て、言たんじないんでしうか。
 ええ、そうです。わたしが声を聞いた時にはもう、女の子は亡くなていたんです。

【第八話 黒電話】
 今の若い子は見たこともなければ使い方も知らないかもしれないけど、昔の電話はダイヤル式でね。プホンよりも前の、黒電話の時代。え? トトロで見たことある? それは古すぎ。交換手なんてもういない時代だよ。
 ともかくね、指先が入るくらいの穴が十個、円周に沿て並んでいて、その穴に指を入れて、ぐると、ストパーみたいなのがあるところまで回す。それで電話がかけられたんだよ。
 子供の頃、妹のままごと遊びにしう付き合わされていたんだ。その時に、黒電話から上司に電話をしなくち、なんてことになた。妹がしろ言たんだけど、まあ、お父さん役らしくね、自分の父親の真似をして電話をかけたんだ。ダイヤルは回さないよ、もちろん。前に適当に回したらたまたまどこかに繋がてしまて、母親に怒られたから。回すふりだけ、口でね、ジーゴロゴロゴロ、なんて言うわけ。そういう音がするんだよ。
 とにかくね、ふりだけだから何処かに繋がるわけがない。繋がたふりをして、あーもしもしわたしだーて、父親の真似をしてしべり出したら、返事がしたんだよ。はあ、て。繋がるはずがないから、ものすごく驚いてね。誰なんだとか言たのかな。自分が何を言たのかはよく覚えてないけど、電話口の向こうから、はあとかふうとか、溜め息のような声が返てきたのはよく覚えてるよ。
 もう気味が悪くてね、慌てて受話器を置いたんだ。
 両親にその話をしてもまたく信じてもらえなかたし、何日かあとに勇気を振り絞て同じことをやてみたけど、もう二度と何処にも繋がらなかた。
 あれがいたい何だたのか、今でも分からないな

【第九話 一本足りない】
 後輩の会社に伝わる話です。
 後輩の勤め先は分析系の会社で、日常的に様々な化学薬品を使ているそうです。その中には毒物や劇物に分類されものも多くて、そういうのて厳密に管理しないといけないらしく、一本一本に番号を振り分けて使用量とかも記録して残すらしいんですよ。
 その会社で昔、ある薬品が一本、所在不明になたそうなんです。その薬品は毒物で、口に入れたり、口に入れなくても体にかかるだけで死にかねないような危険なものだたらしくて、大問題になた。その薬品の管理を担当していた人がいて、仮にAさんと呼びますけど、上司はAさんにどうなてるんだとか言て怒たらしい。
 でも、Aさんを怒たところで薬品が出てくるわけでもなし、Aさんはもちろん、社員総出で探したそうです。でも、見つからない。そういう場合、警察とかに通報しないといけないらしいんですよ。なくなた薬品で誰かが被害に遭た場合は、会社の管理責任が問われることもあるんだとか。
 本当はいけないことだけど、上司たちは翌日になても見つからなかたら通報しようと決めたそうです。Aさんはみんなで探し尽くしたあとも諦めきれずに探していたけど、上司にもういいからと帰されたそうです。
 その翌日、いつまで経てもAさんが出社しない。生真面目なAさんのことだから、申し訳がたたず会社に出てこられないんじないかという話になて、上司と同僚がAさんのアパートに迎えに行たそうです。ところが、いくらインターホンを押しても返事がない。心配になた上司たちは、アパートの管理人に頼んでAさんの部屋の鍵を開けてもらいました。
 Aさんは部屋にいたそうです。ただ、もう生きていなかた。首吊りだそうです。遺書には薬品がなくなた責任を取ると書いてあて、死亡推定時刻は、帰宅後間もなくということでした。
 結局、薬品は見つかたんですよ。ある人が、薬品を使い終わたのに記録するのを忘れていて、そのまま薬品瓶を廃棄してしまただけだたらしいです。
 それからしばらく経て、会社でAさんの声を聞いたという噂が広がたそうです。毒物を保管している部屋で、一本、二本……と薬品を数えるAさんの声が聞こえる、と。遅くまで残業をした社員の多くが、その声を聞いたことがあるとか。一本足りない、と最後に悲しげに言うらしいです。
 後輩はまだ聞いたことがないそうですよ。定時で帰いますからねー、なんて言てましたけど。

【第十話 次に会うのは】
 大学二年の夏休みに交通事故に遭たことがあるんですよ。信号が変わて横断歩道を渡ろうとしたら、信号無視した車が来てドン、て。そこで意識がなくなて、目を覚ましたら年が明けてました。びくりしましたよ、気が付いたら知らないところにいるし、季節は変わているし。
 ずと意識不明だたそうです。俺が目を覚ましたのを見た母が、今まで見たことないほど泣いてて、それでようやく自分の身に起きたことの重大さを知りましたね。
 足とか腕を骨折したけど、それはもう治てました。でもずと寝たきりだたから、リハビリしないといけなくて。車にはねられた、と思て目覚ましたら足腰めちくちてて、なかなか思うようにいかなくて、大変だたなあ。
 寝ている間のことはほとんど覚えてません。感覚としては、夜寝て朝起きたて感じなんですよ。でも、夢みたいなのは見ましたね。
 いつの間にか、小学生の時によく遊んでいた公園にいたんです。団地が近くにある公園で、昼間なら子供の姿がないはずはないのに、その時は誰もいなかた。それどころか、世界中に誰もいないくらいに、静かでした。
 俺はベンチに座てたんですけど、いつまで経ても誰も来ないから捜しに行こうと思て立ち上がりました。誰を捜そうとしてたのか自分でも分かりません。誰でも良かたのかもしれないし、じとしているのが嫌になただけかもしれないです。とにかく、公園の中を歩いていると、ブランコをこぐ音が聞こえたんです。急いで行くと、女の子が一人、ブランコをこいでました。
 見覚えがある気がするけど思い出せないから声をかけられない。でもほかに誰もいないし、どうしようと思ていたら、女の子の方が声をかけてきました。久しぶり、て。それで思い出したんですよ。その子、小学校三年生の時に病気で亡くなた同級生だたんです。
 俺は大学二年生に成長していたけど、女の子はすぐに俺だと分かたみたいで、せかくここに来たのなら一緒に遊ぼうと言いました。俺も、懐かしくていいよて言て、遊んだんです。その子がまだ元気だた頃、その公園で一緒によく遊んでいたから。
 ブランコやシーソーで遊んで、一緒にすべり台を何回も滑て、追いかけこしているうち、夕方になてきました。すると、その子が、俺にすぐ帰れて言い出したんです。それまですごく楽しそうに遊んでいたのに、血相を変えて、早くて。
 俺は、その子と久しぶりに会たから、もと一緒に遊びたかた。その子が病気になてから遊べなくなた分、遊んであげたかたんです。懐かしいというのもあたけど、俺、子供の時に、その子が好きだたんですよ。初恋てやつです。でもね、それをその子に言ても、だめだて、帰て言う。
 その子が段々辛そうな顔になていたから、俺も帰ることにしたんです。それに、誰かに帰てこいと言われたような気がしたから。子供の時、つい夢中になて遅くまで遊んでいて、怒た顔の母が迎えに来たことが何度もあたけど、それを思い出したんです。
 帰る前に、どうして俺のことがすぐに分かたのか、その子に聞きました。体はでかくなてるし声も変わてるし、俺はその時、金髪に近い色に髪を染めてたし、小学生の時とはずいぶん変わてたから。
 その子は、俺のことが好きだたから、すぐに分かて言いました。ほぺた赤くして。かわいかたな。あ、ロリコンとかじないですから、念のため。
 それから、また早くて言うから、名残惜しさはあたけど、またねてその子の頭を撫でて帰りました。どうやて帰たのかはよく覚えてないけど、気が付いたら、病院で寝てたわけです。
 臨死体験て言うんですかね、あれは。お花畑を歩いてたら三途の川が見えて向こう岸には死んだ肉親が、ていうのを想像してたんですけど、俺のは全然違うんですよね。
 でも、やぱりあの世に行きかけてて、それをあの子が帰してくれたのかなて思います。俺がまたねて言た時、その子は、次に会うのはずうとずうと先がいいねて言たから。
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