第8回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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泣かなかった日
投稿時刻 : 2013.08.18 00:23 最終更新 : 2013.08.18 04:25
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- 2013/08/18 04:25:25
- 2013/08/18 00:23:46
泣かなかった日
伊守 梟(冬雨)


 ぼくはおかあさんに買てもらた金魚ばちを見ている。中には金魚が三びきいる。きねんの夏まつりでぼくがはじめてすくた金魚だ。
 おかあさんはぼくに金魚ばちを買てくれてからしばらくして、びういんに行くことになた。たしか、きねんの夏休みがおわるころだたと思う。おとうさんは、「タカシはしんぱいしなくていい」て言たけど、三人の中で一ばんしんぱいそうなかおをしていた。おかあさんは、「ごめんね」と言てぼくのあたまを何どもなでてくれた。
「ぼくはへいきだよ。うんどう会で一ばんになるし、がくげい会も一しうけんめいがんばるよ。だから、おかあさんも早くよくなてね」
 ぼくは少しさびしかたけど、めいいぱい元気よく言た。おかあさんはわらてくれたけれど、おとうさんはなにも言わなかた。

 金魚はかわいそうだ。小さな金魚ばちの中で一年もすごしている。でも、ぼくはどうしたら金魚がよろこぶのかわからなかたし、おとうさんも、「わからない」と言ていた。
 ぼくは大きな金魚をおとうさん、つぎに大きな金魚をおかあさん、一ばん小さい金魚をぼくだと思うようになていた。
 おとうさんの金魚はごはんをたくさん食べる。おかあさんの金魚はゆくりとおよいでいる。ぼくの金魚はそこのほうでおどおどしている。
 ぼくはさびしくなた。おかあさんはまだかえてこない。たまにあいに行くと、どんどんやせほそてるみたいに見える。金魚たちもさびしい思いをしているのかもしれない。きとかぞくとはなればなれになてるんだ。
 ぼくは川ににがしてやろうと思た。金魚たちを自由にしてあげようと思た。

 おとうさんは青ざめたかおでぼくを車にのせて、おかあさんがいるびういんへ向かた。こんなことははじめてだけれど、よくないことがおこているのはわかたから、ぼくはなにも聞けなかた。
 びういんにはうごかなくなたおかあさんがいた。体にたくさんつけられていたくだも、ぜんぶ外されていた。おとうさんは泣いていた。ぼくはおかあさんをただみていた。
 おかあさんはま白で、まるでねむているみたいだた。

 ぼくはおとうさんに「金魚をにがしてやりたい」と言た。おとうさんはなにも言わなかた。おかあさんが一年かんいたびういんから、家にかえてきた。
 ぼくはちかくの川に金魚をにがしにいた。川にはなたれた金魚がしあわせなのかどうか、ぼくにはわからなかた。
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