てきすとぽい
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第8回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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ミス・ゴールドフィッシュ
(
豆ヒヨコ
)
投稿時刻 : 2013.08.18 00:49
最終更新 : 2013.08.18 03:04
字数 : 1000
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2013/08/18 00:49:56
ミス・ゴールドフィッシュ
豆ヒヨコ
「栄えある『ミス・金魚娘』は
……
海藤ミチルさんに決定しました!」
歓声と拍手が起こる。ミチルは、お
っ
とりとパイプ椅子から腰をあげた。あたしはそ
っ
ぽを向き、そんなん分か
っ
てたしとつぶやいた。勿論負け惜しみ。
「やはり美しいですねえ。おめでとう
っ
」
でかい蝶ネクタイをした司会者が、一抱えほどもあるトロフ
ィ
ー
を手渡した。和金が踊るクラシ
ッ
クな浴衣で、ミチルはに
っ
こり感謝の笑みをこぼす。会場からため息が漏れ、審査員たちはしまりなく笑
っ
た。
「馬鹿ば
っ
かりだよ」
恨みを込めて、あたしは再びつぶやく。
ミニ丈の浴衣は、ピンクのランチ
ュ
ウが泳ぐ超・素敵なやつを新調した。かつてない高さに茶髪を盛
っ
たし、カラコンもつけま(つげ)も、メイクだ
っ
て完璧に仕上げた
……
のに駄目だ
っ
た。ふと魔がさす。
「あいつ、本当は男ですよ! 地声はすんごい低いんです!」
あらんかぎりに叫んでやろうかとニヤつく。選んだおじさんたち、100%気づいてないだろう。一方で、そんなことに何の意味もないと知
っ
ていた。ミチルには、賞金もトロフ
ィ
ー
も全然重要じ
ゃ
ない。奴は試してみただけなのだ、自分が”女として”どこまで通用するかを。
かなわないことは、幼馴染のあたしが一番よく分か
っ
てる。それでも全力を尽くすべきだと思
っ
た。芸能界を目指すと誓
っ
た、ライバル同士だからだ。
「ミスと準ミス、検討をたたえる握手をお願いします」
意味不明な儀式は続く。ミチルが目の前に立
っ
ていた。かんざしでまとめた黒髪が艶やかに眩しく、あたしは地面に目を落とした。突然、すごい力で腕をつかみあげられた。低く野太い声が降る。
「グジグジしてんな」
驚いて顔を上げると、観音様のような笑顔があ
っ
た。久しぶりに会う、男のミチルだ。
「ち
ゃ
んと後ろ、ついてこいや」
荒
っ
ぽいけれど、優しさにあふれた言葉。蝶ネクタイの司会が、空耳かと目を白黒させた。あたしは反射的に「うるせえよ」と怒鳴る。その意気だとでも言うように、彼女はまたニヤリと笑う。
未だかつてないエネルギー
が、ふいに心の底から湧いてくる。
悔しい、悔しい悔しい。あたしはこんなところでは終わらない、ち
ゃ
ちなミスコンなんかで打ちのめされたりはしない。必ず後悔させてみせるから覚えとけ。とりわけ開催委員長のバー
コー
ド禿、首洗
っ
て待
っ
とけよ!
あたしは挑むように、ミチルを強く見返す。
彼女はしとやかに背筋を伸ばし、小悪魔な裏声で「がんば
っ
てね」と囁いた。
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