第8回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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さらばデメ太郎、達者でな!
投稿時刻 : 2013.08.18 06:45
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さらばデメ太郎、達者でな!
犬子蓮木


 夜の海を走ている。軽トラを金魚に牽かせて。運んでいるものが金魚なんだから、こいつらに牽かせればいいていう簡単な理屈。
 あたしは黒猫のエルと一緒にお祭り用の金魚を運んでいる。
 そんで浜辺に上陸したら、めそめそした少年がいたんだ。
「何故、泣いていた?」
 あたしの肩にぶらさがていたエルが言う。
「猫がした」
「この街では猫がしべらない?」エルが尋ねる。
 この少年はいろいろ混乱したらしい。金魚の運び屋にもしべる猫にも会たこともないんだて。今時、めずらしい子だ。
 あたしは指をぱちと鳴らす。砂浜でぴちぴちしてた金魚たちが飛び上がて、荷台の水槽に入ていた。
「金魚を運ぶのに猫はいいの? 食べちわないの?」
「猫が金魚を食べちうからエルがいるんだよ」あたしが言う。「話が通じる奴ばかならいいんだけどね。話が通じない奴には猫同士で話してもらう」
「この街の猫はおしべりできないみたいだしね」エルが言た。
 エルが話しかけると少年はぽつぽつ話をしてくれた。
「いじめられてるんだ」
「ああ、そう」
「助けてよ」
 なかなかおもしろいことを言う。ただの金魚の運び屋さんに何を期待しているのか。
「ガコの先生にいいなよ」
「それがいいね」エルも言た。
「だて魔法が使えるじん」
「使えないけど」エルが言う。
「金魚」少年が言う。
「あれは魔法じない。あたしにできるのは次のお祭りで金魚掬い放題ぐらいかな」

 あたしとエルは車の中でぼーとテレビを見ていた。金魚に牽かせているので運転は放置安定。黒い出目金、デメ太郎を泳がせて、でかい目をカメラ代わりに中継していた。
 少年はいじめこと金魚掬いで勝負することにしたらしい。
「ずるくない?」あたしはエルに言う。
「目的は勝負じない」
 まあねえ、目的はいじめから逃れること。
「お、少年の番」
 というところで映像がぐわわんと動いた。デメ太郎、無関係の人に掬われ、連れてかれる。
「ちと−、いいところでし
「結果はわかてる」エルが煮干しを食べながら言た。「これだけでいじめが解決するとも思えないしね」
「エルは冷たい」
「夏に熱いよりはいい。リンゴ飴みたいな静けさが好き」
 テレビのスイチを切た。
「ところでなんで空を飛んでいる?」エルが尋ねた。
「気分、気分」
 運んでいるのが金魚なんだから、こいつらに牽かせて飛べばいいていう簡単な理屈。夜空を飛ぶのは気持ちいいし。
「よーそろー
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