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第8回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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金魚、おなかがペコペコです。
 投稿時刻 : 2013.08.18 14:56
 字数 : 1000
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金魚、おなかがペコペコです。
小伏史央


その一*金魚、お空を飛びます。

 金魚、おなかがペコペコです。
 タケルくんが、エサをくれない。
 タエコままも、ヒロシぱぱもくれない。
 だから金魚は、お空を飛びました。

 青いお空には、綿菓子がいぱい!
 ふわふわの綿菓子。
 おくちに含んで、
 けれど綿菓子は消えてしまいました。

 金魚は悲しくなりました。
 しくしく涙を流します。

 地面に涙が降り注ぎ、
 植物たちは、元気いぱい。
 ぐんぐん、ぐんぐん、空まで伸びて。
 お空に木の実がなりました。

 金魚は、ぱあと太陽みたいに、
 ほほえみ顔を輝かせ、
 おくちを大きく広げたら、
 夢から覚めて水のなか。


その二*金魚、海へ行きます。

 金魚、おなかがペコペコです。
 タケルくんが、エサをくれない。
 タエコままも、ヒロシぱぱもくれない。
 だから金魚は、海へ行きました。

 青い海は、色とりどり。
 深緑のわかめや、
 薄緑のうみぶどう。

 金魚は海の畑を泳いで、
 そこにいた、ヒトデさんに、
 食べ物を分けてください、
 と言いました。

 優しい姿のヒトデさん。
 好きなだけお食べ。
 嬉しい言葉に、涙がぽろぽろ。
 夢から覚めても、涙ぽろぽろ。


その三*金魚、宇宙を駆けます。

 金魚、おなかがペコペコです。
 タケルくんが、エサをくれない。
 タエコままも、ヒロシぱぱもくれない。
 だから金魚は、宇宙を駆けました。

 宇宙の闇には、つぶつぶの光。
 星のまわりをまわるゴミ。
 そこまで泳いで、光を見ると、
 それは、鉄のかたまりで。

 宇宙を駆けて、食べ物さがし。
 水星はただ熱いだけ。
 火星の砂漠、なにもなく。
 木星の海にも、なにもなく。

 金魚は遠くへ遠くへ駆けて、
 なにかないかと探します。
 けれどもなにも。
 ここにはなにもないのです。

 地球に戻り、ゴミの軌道。
 辿てみたら、鉄のくず。
 おくちをあけて、食べてみて。
 吐き出したくても、もう出ない。

 金魚は涙を宇宙に流し、
 丸い水滴、飛んでゆく。
 夢から覚めたら、水槽のなか。


その四*金魚、水槽にいます。

 金魚、おなかがペコペコです。
 タケルくんが、エサをくれない。
 タエコままも、ヒロシぱぱも、
 やぱりくれない。

 水槽のなかの、他の金魚たち。
 ぐたりしていて、動かない。
 ぼこぼこ泡が、出ているところ。
 おくちを開けて、泡を食べても、
 おなかは全くふくれません。

 ぐたりしている金魚のそばに、
 金魚の卵が、眠てる。
 金魚がそこまで泳いでも、
 誰も動きやいたしません。

 ああ、卵は木の実のようだ。
 ああ、卵はうみぶどう。
 金魚、おなかがペコペコです。

 おくちを開けて、
 泣きました。
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