今日も食らう
にんにくをみじん切りにして、鍋にほおりこんだ。たらたらと油をたらす。いい匂いがしてきた。
さてどうや
って食すか。もともと食用ではないので、骨が多いし、うまいものではない。処理は考えずに、包丁をふるい頭をおとして、ぶつ切りにする。
スープかな。スープにしておけばとりあえず大丈夫だろう。
さらに青ネギとショウガをみじん切りにして鍋にほおりこんだ。木じゃくしで炒める。そこにぶつ切りにしたソレをほおりこんだ。最近よく出回っているのだが、彼はあまり好きではない。骨が多い。肉がくさい。食べづらい。内臓を食べるのが好きだと、彼女は言っていたっけ。彼は身震いする。
内臓は苦くて嫌いだ。気持ち悪い。
「それより美味しいのは頭部のみそよ」
彼女はそう言っていたっけ。そんなものをたべるなんてとありえない思う。味覚だけは彼女とあわない。
スープが煮立ってきた。すこし辛くしよう。
豆板醤とごま油と中華スープのもとをスープに混ぜ合わせる。
味付けをする。辛くしておけば彼女は「美味しい」というだろう。
さて、あともう一品。食材のなかから、味付けの濃い大きなソーセージをとりだした。香辛料やら保存料やら着色料やらで、どんな肉が加工されているかわかったもんじゃない。それを裂いて、野菜を添える。
さっきのスープとあわせてテーブルにいそいそとセッティング。いいじゃーん。
ぴちゃんという音がして、彼女がやってきた。彼女は頭のうえのコブが魅力的だ。鱗がぬめぬめと真黒なところも大好きだ。
彼は自身の体色をみる。ありふれた白と朱色の鱗。うんざりする。
「いやーん。また『ほもさぴ』?」
「好きだっていってたじゃないか。そういう事を言うなら食べなくていいよ」
「だって、最近『ほもさぴ』ばっかりだし」
彼の不機嫌を見て、あわてたように彼女は魅力的に胸びれを震わせる。ちろりとコブの下のつぶれかかった目をこちらに這わせてくる。
「でも、あなたが作ってくれるなら、なんでも好きよ」
黒いコブも震えている。
まあ、いいか。彼は彼女のみえみえのお愛想にのることにする。
はらも減ったし食事にしよう。彼は進化した胸びれをのばすとスプーン状のものをとった。尻尾は水につけたまま、テーブルについた。食材のことは反省する。
しかし、どうして頭のいい人は『ほもさぴ』を矮小化して、家畜にしようだなんて思ったのかな? 鱗がない家畜なんて気持ち悪いじゃないか。
彼女とテーブルにつく。
今日も食らう。