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第12回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・白〉
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染めた男
 投稿時刻 : 2013.12.15 00:11
 字数 : 682
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染めた男
永坂暖日


 寒さで小さな頬は林檎のように赤くなていて、新雪のような色をした髪との対比がより印象的だた。
 親もなく家もなく行くあてもない少女を拾たのは、腐たごみが散らばりすえた臭いの充満する路地裏で、そこにまたく似つかわしくないすがすがしい光の射し込む朝だたのを、昨日のことのように覚えている。
 拾たのはほんの気まぐれである。この少女に、男の持てる技のすべてを教え込んでみようと、戯れに思い付いたのだ。雪のような髪が、血で濡れたらどうなるのだろうという残虐な想像をしてみたのだ。
 暗殺者というろくでもない男に拾われたのに、少女は恩義を感じたのか、男の教えを身に付けようと必死に努力した。気まぐれに拾たがどうやら才能がありそうで、男も甘くはしなかた。
 見つけた時には乳臭いガキだたのに、気が付けば唇に紅をさすような年頃になていて、その時にはいぱしの暗殺者だた。
 腕に関しては申し分なく、女であることを最大限に利用するしたたかさも教えていないのに身に付けていた。惜しむらくは、雪のようだた髪色が、血で染またように赤くなたことだ。
「光にあたればきれいな赤に見えるな」
 男は片肘をついて、隣で寝そべる娘の髪をすいた。ちうど彼女の頭に朝日が射している。
「わたしは何色でも構わないよ。あなたがいいと言てくれるなら」 
 けなげなことを言う娘がいじらしくて愛おしい。無垢だた娘を自分が染めたと思えばなおさらだ。
「朝だろうが夜だろうが血に染まていようが――いい色だ」
 剥き出しの娘の肩に、唇を落とす。
 朝日が燦々と降り注いでいるが、寝台から抜け出すのはまだ先になりそうだた。
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