てきすとぽいトップページへ
第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
 1  22  23 «〔 作品24 〕» 25  49 
幽霊屋敷に住むものは
 投稿時刻 : 2014.05.04 23:44
 字数 : 898
5
投票しない
幽霊屋敷に住むものは
永坂暖日


 坂の上には、とくの昔に住む人のなくなたちと大きな家がある。管理する人もいない家はあという間に荒れ果てて、幽霊屋敷と評判だ――という。
 ちんと住人がいるのに、失敬な。
 我が家を指さして幽霊屋敷だと言う人々とは、生物としてのありようが違うだけだ。
 わたしの目には度胸試しだといて学校帰りに忍び込んでくる子供たちの姿は見えるし、彼らに触れることもできる。わたしの声も、彼らの耳には届いている。現に、

「そろそろ塾に行く時間じないかい?」

 強がて先頭を歩く男の子の肩を叩き耳元でそう言てあげると、ひあと叫び声を上げて、みんなで転げるように逃げていくのだ。
 そんなことを繰り返していたら、何やらものものしい機材を抱えたおとなたちがやて来た。
 なんだろうと二階の窓から眺めているうち、どうやら彼らは我が家を取材しに来たテレビ関係者だと分かた。幽霊屋敷という噂を聞き付けたのだろう。都会から遠い、こんな片田舎にご苦労なことである。
 わたしが、家に土足で上がり込む主に子供たちにしう声をかけたりしているから、幽霊がいる、という証言はたくさんあるだろう。
 でも、度胸試しで乗り込んできた子供と、重たそうなテレビカメラやマイクを持たおとなたちは違う。わたしは黙て、おとなたちがどうするのか観察した。
 彼らは数日粘ていたが、わたしがじと黙ているので、当然ながら彼らの期待するようなことは何も起きない。そのうち、いちばん偉いと思われる男が「大金をかけて来たのにどうしてくれる」と怒り始めた。そうは言ても、こればかりは部下たちにもどうしようもないので困惑するしかないようだ。
 それでもかれらは更に数日粘り、とうとう諦めて引き上げていた。
 たいそうなお金をかけたであろうに残念だたね、と思いながら、わたしは彼らの観察記録の仕上げに取りかかる。今夜中に、上司に報告できそうだ。
 一息つこうと、わたしは荒れた庭に出て空を仰いだ。まばらに輝く星の一つ、よく目をこらさなければ見えないその一つが、わたしの故郷。
 地球人の生態を観察するため、わたしはこの地域に派遣された、彼らから見ればいわゆる『宇宙人』なのだ。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない