第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
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幽霊屋敷から出て来たのは古切手
投稿時刻 : 2014.05.05 23:25
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幽霊屋敷から出て来たのは古切手
なんじや・それ太郎


「おじさんの家には大金があるはずなんだ」と同級生の中村くんが言た。
「あんな幽霊屋敷に?」僕は半信半疑で聞き返す。
 そのおじさんとやらは、浮気がバレて女の人と一緒にどこかに逃げたらしい。残された奥さんは預貯金を処分し、実家に帰てしまた。残たのは廃墟と化した洋風な館だけだた。
「もし宝物を見つけたら、半分あげるから、一緒に探してよ」
「宝物て何だよ?」
「わかんないけど、あるんだよ。宝物が」
 しかし、こんな田舎にも手癖の悪い連中はいるらしく、テレビや冷蔵庫、布団に衣類、はてはトイレの電球までもがすでに盗まれており、家の中は荒れ放題だた。この上、何の宝物があるというのであろう。
 昼間だというのに、薄暗い部屋の中をあちこち歩き回る。何となく怖い気持ちが先立てはいたものの、何十年も前の古いガラクタを目にすると、昔の世界にやてきたようで、ちとだけ楽しい。
「はあ、やぱり宝物なんてなさそうだね」
 中村くんだて、まさかここまで散らかているとは思わなかたのか、完全に諦めモードだた。僕はそんな中村くんの落胆振りが見ていられなくて、口から出まかせを言た。
「ほら、ごらん、あの壺。あれなんか、鑑定団に出したら、高い鑑定結果が出そうだよ」
「は……」中村くんは溜息をついた。「あれはお父さんが骨董屋で一番安かたのを選んで買て、おじさんにプレゼントしたもんさ。高いわけないよ」
「何だ、そうなのか」残念に思いつつも壺に近づいた僕は、ついその中を覗き込んだ。
 おや、何かある。
 中村くんを呼んで壺をひくり返してみると、中には切手の束があた。額面は10円とか5円とかで、消印はないけれど単色の雑な印刷だ。こんなもんだて金券シプに持ていけば、アイスクリーム代ぐらいにはなるかもしれない。
 そう思て、僕たちは金券シプに切手を持て行た。しかし、店のおじさんは、「子供は無理だよ。お父さんか、お母さんを連れて来なさい」と取り合てくれない。
 仕方がないので、切手は約束通り山分けし、僕はそれを大切に保存しておいた。
 それから二十年が経た。東京オリンピクが決また時、僕はその時の切手のことを思い出した。なぜなら、その切手は東京オリンピクの記念切手だたからである。本当に単色刷りの貧相な切手なのであるが……
 ネトで検索し、その値段を調べてみると、森永のアイスじなくて、ハーゲンダツのアイスが買える程度の値段にはなていた。おい、日本政府、もと品薄にするとか考えなかたのかよ! 希少価値なんて全然ないじないか。またくもう……
 しかし、東京オリンピて1964年じなかけ? 切手には1940年とか書いてあるものも混在しているんだが。まあ、印刷ミスなら印刷ミスでマニアもいるらしいので、今度切手屋さんに持ていて鑑定してもらう価値はありそうだ。
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