てきすとぽい
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第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
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The Friendly Ghost
(
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
)
投稿時刻 : 2014.05.05 23:42
最終更新 : 2014.05.05 23:44
字数 : 2016
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2014/05/05 23:44:38
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2014/05/05 23:44:17
-
2014/05/05 23:43:54
-
2014/05/05 23:42:19
The Friendly Ghost
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
タケルの一家が、この辺じ
ゃ
「お化け屋敷」なんて呼ばれたりもしてた、ず
っ
と空き家だ
っ
た古い洋館に引
っ
越してきたときのことをよく覚えている。アメリカ帰りなんだ
っ
て大人たちが噂してそわそわしてたから。今思うと、興味半分、羨望半分
っ
て感じのテンシ
ョ
ンだ
っ
たんだと思う。私は最初アメリカがどんな場所か知らなか
っ
たんだけど、タケルが全然流行の歌とかアニメのことを知らなか
っ
たから、どうもずいぶんと遠いところから来たらしい
っ
てことだけはわか
っ
た。
タケルは日本のアニメは知らなか
っ
たけど、アメリカから持ち帰
っ
たものを少し持
っ
てた。日本ではまだ手に入りにくいデ
ィ
ズニー
のグ
ッ
ズとか、ロー
ラー
スケー
トとか、アメリカで放送されてるアニメのビデオとかだ。タケルは小学校3年の4月の、丁度クラス替えのタイミングで転校してきたんだけど、どうもその海外帰りだ
っ
ていう立場の微妙さがあ
っ
たのか、友達作りの波に出遅れて、いつも独りぼ
っ
ちだ
っ
た。だから、私は気を使
っ
て毎日遊んであげてた。
今思うとその子供向け映画は別に彼のお気に入りでもなか
っ
たのかもしれないけど、一度興味本位で「見せて」と言
っ
て見せてもら
っ
てから、私はす
っ
かり好きにな
っ
てしま
っ
たのだ
っ
た。
筋書きはこうだ。
幽霊屋敷と呼ばれているある空き家がある。そこに、大金が眠
っ
ているという噂を聞きつけてや
っ
てきた強欲な男女と、幽霊研究家の親子がや
っ
てくる。屋敷にはいたずら
っ
子の幽霊が3人と、心優しい幽霊が1人いて、いたずら
っ
子3人はその招かれざる客を4人とも追い出そうとするのだけれども、心優しい幽霊は研究家の娘が好きにな
っ
てしま
っ
て、色々とトラブルはあるけれど、最終的にオトモダチになる。ラストのシー
ンで、一時的に心優しい幽霊が人間の姿を借りて、ホー
ムパー
テ
ィ
ー
で女の子と一緒に踊るのだ。そのシー
ンが、ロマンテ
ィ
ッ
クで大好きだ
っ
たのだ。
アメリカのビデオだから字幕がついていなくて、大まかなストー
リー
はタケルに解説してもら
っ
て理解した。
「ねえねえ、あの映画みたい、つけてよ」
高校から帰
っ
てきたばかりのタケルにそう言うと、あからさまにうんざりとした顔をされた。
「またかよ、お前ほんと飽きないな」
「だ
っ
てあれ好きなんだもん。最近はや
っ
てるち
ゃ
らい日本のドラマより面白いもん」
「どうだか」
そう言いながらビデオだけ再生してくれたけど、タケルは私と一緒に見てはくれなか
っ
た。イヤホンをして別の音楽を聴きながら、宿題をしている。帰
っ
てきてすぐ宿題なんて、なんて優等生!
邪魔をしないように静かに映画を見た。
幽霊研究家の娘は、幽霊屋敷に引
っ
越してきたから転校生だ。友達がなかなかできなくて、ホー
ムパー
テ
ィ
ー
でも独りぼ
っ
ち。そこに、颯爽と人間にな
っ
た幽霊くんが現れて、会場の視線をか
っ
さらう。幽霊くんは後姿しか映らないのだけど、周りの反応から、彼が恐らくハンサムでび
っ
くりされているのだというのがわかるのだ。
「ねえ、このシー
ン、いいよね、私、大好き。どうしてタケルはこの映画そんなに好きじ
ゃ
ないの」
宿題と明日の予習が一段落ついたらしいタケルに、私は聞いた。タケルはヘ
ッ
ドフ
ォ
ンを外してこちらに向き直ると、何も言わずにじ
っ
と見つめてくる。むくんだにきび面に、眉間に皺、垢抜けない感じの制服の着こなし。友達が相変わらずいないのは知
っ
てる。彼女なんて夢のまた夢だろう。映画の女の子を演じてた子役の娘は可愛か
っ
たけど、それ以外の点で、タケルと彼女の立場はよく似ている。
「見てて嫌にならない?」
真面目な顔で、タケルは聞いてきた。意味がわからなくて、私は首を傾げる。タケルは少し考えるそぶりを見せた後、言
っ
た。
「キ
ャ
ッ
トはいつか大きくな
っ
て大人になるけど、キ
ャ
スパー
はず
っ
と子供の幽霊のままなんだよ」
「それが?」
「俺たちみたいじ
ゃ
ん」
私は黙
っ
て、しばらくタケルが言
っ
た言葉の意味を考えてみた。
「タケルがキ
ャ
ッ
トで、私がキ
ャ
スパー
なの?」
タケルが頷いた。
「でも私、仮に人間の姿になる力を手に入れても、合コンでぼ
っ
ちにな
っ
てるタケルを助けにはいかないよ?」
「それは別に良いんだけど
……
」
タケルは、小さくため息をついた。
「いつか別れなき
ゃ
いけないと思
っ
たら、一緒にいるのが辛くならないか?」
私は困
っ
た顔で首を振
っ
た。この土地に住んでどれだけの時間が経
っ
たのだろう。幾千の出会いと別れがあ
っ
たし、それは私の宿命なので、特に悲しいとか辛いとか思
っ
たことはなか
っ
た。タケルの気持ちがよくわからなか
っ
た。でも、私と一緒にいるのは気分がよくないことなのだろうか。
「ごめん、なんかよくわかんないけど、私、タケルの目の前にもう現れないほうがいいのかな?」
「それは
――
……
」
哀しげに目を伏せたタケルを見て、そうか、そうなのか
っ
て思
っ
た。
「ごめんね、私、人間の気持ち、わかんないからさ。もう、タケルの前には姿見せないね」
それだけ言うと、私はふ
っ
とその場を後にした。
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