幽霊船
(1)
R-667Dはクオリアを有するアンドロイドである。彼は宇宙船を独りで操縦していた。
すると、彼は寂れた宇宙船の死骸を見つけた。その船はまるで幽霊屋敷のように、宇宙塵にまぎれて存在感をなくしている。彼がこの船を発見したのも、偶然によるものだ
った。
彼はめぼしいものがあれば回収、または通達することを主人に言い渡されている。見た目は不気味で、寂れているが、大きさはなかなかのものだった。なにか掘り出し物があるかもしれない。
迷ってしまった。船のなかは妨害電波が駆け巡っており、彼は自身のクオリアだけをもとにして船内を進むより仕方なかったのだ。
兄弟たちに救援信号を送ってみるも、彼らにちゃんと届くかはわからなかった。
どれくらい歩いただろう。出口はもちろん、金になるものもひとつ見つからない。
しかし幽霊は見つかった。幽霊とは、人間の恐怖や不安などのクオリアが大脳皮質と結合してもたらされる現象のことだ。幽霊はときに人間のクオリアに干渉することで対象を傷付けることができる。ここはおとなしくしていたほうがいいだろう。彼は幽霊を視界から外すよう努力して歩いた。
そしてなにごともなく素通りする。さらに出口がみつかった。
なんだやはりは単なる幽霊屋敷か。収穫はなかったが、主人や兄弟たちへの土産話にはなるだろう。
彼は出口に停まらせていた、自分が乗ってきた船にのりこむ。
船は寂れて、稼働しなかった。