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一発逆転! 上半期ベストを狙え! 愛のいじり小説大賞
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桃太郎(海賊版)
 投稿時刻 : 2014.05.31 16:27 最終更新 : 2014.06.01 14:29
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- 2014.06.01 14:29:19
- 2014.05.31 16:27:34
桃太郎(海賊版)
永坂暖日


 今は昔――いや、今は今、現代の日本海側のとある場所に海賊王と呼ばれると者がいた。碧という名があたが、しんと名乗る人物に海賊王という名を授けられた剛の者であた。
 今年になて日本海側でダイオウイカが水揚げされたニスが何度か流れているが、そのダイオウイカは海賊王に戦いを挑み敗北したダイオウイカのなれの果てなので、海賊王という呼び名は案外似合ていて、しんなる人物は「ボクちんに間違いはないのだ、えへん」と言ていたとかいなかたとか。
 それはさておき、海賊王はのぴきならない事情で鬼島へ鬼退治に行くことになた。業務上の命令であるから致し方ないが、月曜日から行かなくてはならず、海賊王は「月曜日が憎い! 働きたくない!」と言いながらも行くしかない状況であた。
 ダイオウイカと死闘を繰り広げた海賊王とはいえ、相手は今度は鬼。イカに角はないが、鬼にはある。しかも鬼はパンツをはいている。鬼のパンツは強いという。
 一人で行くのはいかにも心許ない。困たなイヤだなそもそも働きたくないなと思ていたら、
「そのホタルイカをくれたら、鬼退治に付き合いますよ」
 と言てくる者が現れた。ずきんをかぶり、骸骨のような顔で、右目が赤く光ている。
 見るからに怪しい。でもホタルイカをあげれば海賊王の盾となり剣となり鬼と刺し違えてもいいと言ている(と解釈した)ので、海賊王はホタルイカをあげた。怪しい骸骨は茶屋と名乗た。
 それから更にしばらく行くと、
「そのホタルイカをくれたら、鬼退治に付き合いますよ」
 と言てくる者がまた現れた。今度はもふもふのキツネである。しべるキツネというのは怪しいが、見た目はもふもふだし、なにがしかに化けて鬼を驚かせるかもしれないし、寒くなたらもふもふの毛皮が使えそうだし、海賊王はホタルイカをあげた。キツネは、キツネなのに犬子と名乗た。
 それから更にしばらく行くと、白いウサギに出会た。ウサギは鬼退治には興味がなさそうだたが、鬼退治のお供は三人くらいいた方がよいと思た海賊王は、
「ホタルイカをあげるから、鬼退治についてきてくれませんか」
 と頼んだ。ウサギはしばらく考えていたけれど、もふもふのキツネを見て目をきらりと輝かせ、海賊王にそと言た。
「ホタルイカはいらないけど、あのキツネを狩ていいならついていきますよ」
 鬼退治の前に狩られては困るが終わた後なら問題ないので、鬼退治についてきたらその後にキツネを狩てよいという密約を海賊王とウサギは交わした。ウサギは晴海と名乗た。
 こうして、骸骨、キツネ、ウサギをつれた海賊王は鬼島を目指して大海原にこぎ出した。
 日本海の波は荒々しく、小さな舟は大海に浮かぶ木の葉のごとし。キツネがひどい船酔いになり、毛並みの艶が見る見る悪くなていく。
 弱ているところを狩るのも悪くないと考えているのか、ウサギが虎視眈々といたまなざしでキツネを見つめていて、海賊王は今はまだダメだよとなだめるのが大変だた。
 海賊王とウサギの密約など知る由もない骸骨は、弱るキツネを哀れに思い「犬子先輩はほかの誰よりも三半規管が発達しているんですね」と言て励まし続けた。小さい舟の上でキツネをいたわてくれたのは骸骨だけであり、鬼島に着く頃には二人の間には、第三者がちと割り込めない空気が漂い始めていた。キツネを狙ているウサギと、それを押し止めていた海賊王はそれに気がついていたが、そとして見守るのがいいねと言い合た。二つ目の密約だた。
 鬼島に着いた一行は早速上陸するも、浜辺には人――いや、鬼子一人いない。小さな島だたのでみんなで捜索したが、そもそも人の住んでいる気配がない。
「はるばる海を渡てきたのに誰もいないなんて、許さない!」
 海賊王は赤い夕日に向かて叫んだものの、鬼退治をしなくて済んだから内心ほとしていた。骸骨とキツネは、手持ちぶさただからなのか、あるいは船上で発生したいい雰囲気が未だ持続しているからなのか、波打ち際で追いかけこをしている。捕まえてごらんなさい、とキツネが言い、待て待てこいつ、と骸骨が言ていて楽しそうだから、おそらく後者だ。ウサギはそんな二人を眺めながら、推敲作業をしているようだた。
 退治する対象がいないし、こんなところまで確認にくる者もいないだろうから、鬼退治しましたということにして、もう帰ろうと海賊王は決めた。でも今から舟を出してももう日が暮れるから、帰るのは明日にしよう。幸い鬼はいないから野宿しても問題はない。ホタルイカがまだ残ているから食べ物もある。しかし夜は冷えるかもしれないから暗くなる前に薪になるものを集めておいた方がよさそうだと思い、浜辺で戯れる骸骨とキツネはそとしておいて、ウサギに声をかけ、二人で薪拾いに出かけた。
 キンプみたいだねと話しながら薪になりそうな枝を集めていたら、繁みの奥からがさがさと怪しげな音がした。いないと思ていた鬼が、まさか本当はいたのかと二人は身構える。なにか大きな動物が移動する音はどんどん近づいてきて、やがて繁みの中から一人の人物が現れた。
「あ、あなたは!」
「ボクちんをのけ者にして、みんなで楽しそうにしているなんてずるいんだにあ。許さない!」
 黒い手ぬぐい状のものを頭に巻いた海賊風のその人物は、ちと悲しそうな顔をしていた。海賊王に、海賊王という名を授けたしんなる人物であた。
「しんさん、なんでこんなところに。微笑みの国にいたのでは……
「そんなことより、海賊王はなんでもと奥地まで入らなかたのだー。ボクちんがせかく鬼に扮して待ていたのに、ひどいじ
「待てください。どういうことですか?」
 海賊王もウサギもなにがなんだかわからないが、よく見ればしんなる人物の頭には、とんがりコーンくらいの大きさの角がついている。
「海賊王が鬼退治に出向くように仕組んだのは、ボクちんなのだー。茶屋ちんや犬子ちんがホタルイカと引き替えに海賊王について行きたくなるように、夜な夜な夢枕に立て暗示までかけていたのにー。ちなみにウサギの人は常々キツネを狩りたいと言ていたから、特になにもしていないのだ」
 つまり、鬼などそもそもいなかたのだ。すべてしんなる人物の仕組んだことだたのである。
「どうしてこんなことをしたんですか」
 鬼退治をしなくて済んだもののここまで来るという労働をしていた海賊王は、いまいち納得できない。ウサギは、とりあえずこれで思う存分キツネを狩れるからいいやと思ているようだ。そしてそのキツネは、骸骨とますますいい感じになていた。浜辺で肩を寄せ合い、沈む夕日を眺めている。もう誰もあの二人の間に入り込めそうにない。二人にはこの先様々な困難が降りかかるかもしれないがきと手に手を取り合て乗り越えていくのだろうと思うと、海賊王のドキは胸々と高鳴るのだた。
「てきすとぽいの企画王としてやるべきことをやただけだがー。鬼に扮したボクちんを海賊王たちが見つけて、そこでタネ明かしをする予定だたんだじ。なのに探すのをあきらめるなんてー
 海賊王が不整脈を起こしかけているのを知らないしんなる人物はそう言いながらも、それはそれで良さそうな感じを醸し出していた。
 結局なにをしに来たんだかよくわからなくなてしまた海賊王は、仲むつまじそうなキツネと骸骨を見ていると一向に不整脈が治まらず、抜き足差し足忍び足で背後からキツネに近づくウサギにすべてを任せることにした。




 ――という収拾のつかない夢を今朝見たペンギンは、それをネタに、小話ともつかない小話を書いてみるのであた。
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