てきすとぽい
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第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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JO-OH!
(
大沢愛
)
投稿時刻 : 2014.08.17 11:31
最終更新 : 2014.08.17 14:54
字数 : 1000
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2014/08/17 14:54:21
-
2014/08/17 14:53:38
-
2014/08/17 11:31:11
JO-OH!
大沢愛
凍りつく真夜中に、星辰をかき消す一撃を!
「古エ
ッ
ダ」の記述以来、長らく誤解されていた彼女の実像が今、明らかになる。
バー
サー
カー
のごとき荒ぶる狂戦士としてのイメー
ジからか、美しき裸身に獣皮を纏い、殺戮の限りを尽くす血染めの立ち姿が彼女のものとして崇められてきた。
だが考えてもみるがいい。強さと残忍さとは相容れないものだ。強大なものほど一撃で獲物を屠る。惨たらしさは恐怖の裏返しであり、怯懦の表れだ。
彼女には血染めの姿は似つかわしくない。発掘された史書によれば返り血を浴びることすらなか
っ
たという。さらに、戦いに臨む時、彼女は一糸纏わぬ姿であ
っ
たという。
もちろん異論もあ
っ
た。彼女が高貴なる裸身を敵の前に晒すはずがない、と。あるいは、最強の戦士である彼女は己が身を護る必要を感じなか
っ
たのだ、と。
誇り高き最強の存在である彼女に、恥じるところなどあろうはずがないではないか。あらん限りの美を閃かせて彼女は戦
っ
た。すべての敵は彼女によ
っ
て薙がれ、裂かれ、そして斃された。
これまでの多くの偽書によれば、彼女は猛
っ
た肉食獣のごとく眼を見開き、口を開け、敵に襲いかか
っ
たという。至高の戦士である彼女を獣の位置にまで貶めて恥じ入ることのなか
っ
た多くの先人たちの愚かしさに、今はただ瞑目しよう。
彼女は戦いの場では常に微笑みを絶やさなか
っ
た。史料によれば「穏やかな乙女のごとき」笑みだ
っ
たという。凄惨な戦場において彼女と相見えた者は皆、武器を地に落とし、跪いた。彼女は静かに歩み寄る。無数の疵に覆われた甲冑の中で、男たちは全身の膨れ上がる苦痛に苛まれる。俯いた視線の先に彼女の裸足の爪先が現れる。月の海の桜貝にも似たそれが目に入るや否や、男たちの生命は果てた。月明かりに浮かぶ遺骸たちの顔は、微かに笑
っ
ていたという。
彼女によ
っ
て倒された中に一人の若き戦士がいた。彼は彼女の噂を聞き、敵わぬまでも矛を交えることを夢見ていた。
戦場で、彼は彼女の歩み寄る気配を感じた。幾千幾万の戦士たちが倒れた間合いにな
っ
ても、張り裂けそうな胸をおして耐えていた。最後の力を振り絞り、目を上げる。地上に舞い降りた美神の如き裸身がそこにあ
っ
た。
その瞬間、彼は確かにこう聞いたのだ。
「め
っ
!」
どれだけ経
っ
ただろうか。
さしも凄惨な戦いもようやく終わりを告げる。
寒々とした曙光の中、朝露に濡れた彼の遺骸はこの世のものとも思えぬ至福の表情だ
っ
たという。
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