「ミスプリ三鬼神」に怒る鬼嫁(カード無効化&没収カード)
「戦わずして勝つ」
すべての戦略に勝るのはこれであろう。そしてこれを一時、体現する若者がかつて存在した。
相手がどんなに強い夷狄であろうとも、目にも止まらぬ韋駄天のごとき俊敏さでお宝を、姫を、彼は取り返してくるのである。厳密に言うと勝つことはできないのだが、相手の持ち物を必ず奪い取
ってしまえることから、人々は彼をこう称賛した。「韋駄天の小平痔」と。彼が自分の名前さえ読めないことをいいことに、人々はこぞってわざと字を間違えたまま偉業を記録したのだ。それほど彼は愛されていた。少なくとも一時は。
だが、ほどなくして夷狄の侵攻が再び始まった。三度連れ去られるお姫様。しかし今度はいけなかった。扉を開くのに頭を使う牢獄へと閉じ込められたのだ。なまじ彼が戦いを避けていた間に、夷狄が知恵をつけてしまった。侵攻はより酷く狡猾になっただけで、彼も最早役立たずだった。それ以降、彼の記録はない。
◆
「何を言っているのか分からない」
それ以上に敵を威圧し得る言葉はあまりないであろう。言葉の意味はよく分からんほど怖いものである。
「しゅびどぅば、しゅびどぅば、しゅびっとぅる~」
今日も今日とて意味不明。「三国一の怪力尼僧」と呼ばれた玉比丘尼が小道を通る。するとその時、比丘尼の首を差した蚊があった。瞬間、この世のものとも思われない嬌声が発せられたことを、門前の小僧が記録してしまったのである。口ずさむ者は金輪際いないであろうと思われたその言葉が、何の拍子にか再び世に刻まれることがあるとするならば、それはこの逸話を持つ比丘尼の名声を称えるものであるに相違ない。
◆
「彼を知り己を知らば百戦して殆うからず」
かつて大和の国に、諸葛孔明と並び称されてもおかしくないほどの切れ者にして稀代の軍師と呼ばれた男がいた。後年の歴史書に彼の名が記されることがなかったのは、士官を望まず、これといった表舞台に立たなかったこともあるが、後に「山師の孔明」とまで侮辱されるようになったのには訳があった。百戦無敵との噂を携えてついに小国の軍師となったとき、老いには勝てずすっかり呆けてしまっていたが、その自覚もなく百一戦目に突入してあっさり討ち死にしたのである。老兵はただ去るべし。
◆
「……何これ?」
大金をつぎ込んだというからどれだけ強いカードなのかと思えば、単にコレクターからするとその希少価値は計り知れないだけだった。私は夫の頬をもう一度はたいた。