第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
 1  31  32 «〔 作品33 〕» 34  47 
コメ・ソード
投稿時刻 : 2014.08.17 14:28
字数 : 1000
5
投票しない
コメ・ソード
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.


 コメ・ソード。またの名をライスの剣。
 それは、この大陸に生まれ育て知らぬ者はいないであろう、聖剣。
 それはかつて、この大陸を深刻な食糧危機に陥れた悪しき神との戦いの中で生まれた、伝説の剣である。

 それはまだ、食糧が神から与えられる時代だた頃。
 人類の主食である米を司る大神が、突然に堕落してしまた。
 それはあまりに突然のことだた。
 毎年、苦しい夏が過ぎ去り秋が来る頃、大陸を黄金色に染めるために天上から降りてきていた大神が、人々が祈りを捧げども捧げども一向に姿を見せなくなたのだ。
 大陸三賢者が天上の様子を見に行けば、大神はその年の春に巫女として捧げられた女に籠絡されていた。
 美しい娘に骨抜きにされた神は、神として為すべき職務を忘れ、地上から恵みという恵みを奪い、そのすべてを巫女であた女に与えた。そうして天上の神殿で、神と、もはや巫女とも呼べぬただの女は、堕落し切た汚れた暮らしをしていた。
 人々は立ち上がる。もはやあのような神の支配からは逃れ、この大陸を自分たちの手で守り育てようと決意したのだ。
 人々はまず、神から最初に与えられた、狩猟や農作業用の道具をかき集めた。神の支配の象徴であるそれらを壊す。
 次に森を焼いた。神の作た大陸を覆ていた原生林を焼き尽くし、天上界に自分たちの翻意を知らしめる。
 そして燃え上がるそこに、剣を、矢じりを、桑や鋤を放た。
 鉄が形をなくした。
 これが鉄の精錬の起こりである。
 このようにして生まれた聖剣を携え、人々は天上界へ向かた。戦いは苛烈を極めた。地上も天上も荒れ狂い、人々には多くの犠牲者が出た。
 だがほどなくして、決着がつく。
 宮殿で人類に立ち向かう神を置いて、一人で逃げようとした愚かな女を、戦士の一人が捉えたのだた。
 愛していたはずの女に裏切られたと思た神は絶望し、人々を自分の支配から解放した。
 こうして一度裸の大地になた大陸を、人々は一から自分たちの手で耕し、育て、豊かにしたのだた。

 ところで、この巫女は地上に連れ戻された後処刑される手はずだたのだが、いつの間にか一人の戦士と共に姿を消してしまた。この戦士はこの戦いで一番の功績を挙げた勇者であたのだが、このことから今では女の色香に惑わされて神同様に堕落した恥知らずの戦士だと言われている。
 コメ・ソードとは本来、この戦いで生まれた剣全般の呼称だたが、現代では彼が持ていた剣のみを指すこともある。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない