第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
 1  7  8 «〔 作品9 〕» 10  47 
くらげ2号&くらげ3号
投稿時刻 : 2014.08.16 21:53
字数 : 1000
5
投票しない
くらげ2号&くらげ3号
伝説の企画屋しゃん


 やはり今夜も聴こえてきた。
 何が聴こえてきたて? それはあの歌声に決まている。
「おーそーれーみーおー こーんやもてつやさー♪ おーそーれいたかー うららららー♪」
「小林くん、おつかれ。今日も家に帰れないのかい?」
 デスクを片付けると、僕は歌声の発信元に声を掛けた。
「おーそーれーみーおー♪ パートナーの野郎がー 長期休暇でカリブだしねー うららららー♪」
「永坂くんや茶屋くんたちは、とくに仕事を終えて飲みに行たけど。小林くん、今日で何日めだけ?」
「3日めだよー おーそーれーみーおー♪ 窓の外は真夏なんだてねー おーそーれーたー♪」
 モニタを見詰める目が、瞬きゼロ。すかり壊れてしまた小林だが、もともとが職人肌の開発者だ。むしろパートナー不在なのをいいことに、やりたい放題やているのだと見る向きもある。
「真夏というより真夜中だよ、小林くん。終電がなくなるから僕は帰るけど、君にいいものをあげようか」
「おーそーれーみーおー♪ もらえるのなら なんでももらうよー♪ 短納期の仕事も余裕でアープさー おそれ見やー♪ なんちてー♪」
「もうじきリリースする<オーンバトル くらげ界を制する者>の隠しカードなんだけどね。くらげ2号ていうんだ。僕がデザインした中では、わりと気に入ていてね。デキの全キラのステータスを800%アプさせるサポートキラなんだ」
「おーそーれーみーおー♪ 800%て バランスくずれてるてばー♪ うららららー♪」
「ま、モデルは君なんだから、文句を言うな。いつもパートナーの陰に隠れているけど、縁の下の力持ちてね。いや、いつも君の仕事ぶりには感心しているんだよ」
「おーそーれーみーおー♪ おーそーくーなーるーと 電車なくなーるーよー♪」
「そうだな。じあ、帰るよ。困たことがあたら、いつでも僕に言てくれ。割り勘なのをいいことに飲み会で常人の5倍飲む永坂くんや、月曜はさぼてばかりの茶屋くんとは、ちがうんだ。この部署だて、僕の企画でもているようなものだしね。僕とは仲良くしておいたほうが、君のためになるに決まてるよ」
 それだけアピールすると、僕は会社を出た。
 今度の人事では、大方の予想を覆して小林がリーダーになるらしい。この俺様を差し置いて、ふざけたことをしてくれる。
 電車に乗ると、俺はアプリを立ち上げた。
 本当のお気に入りは、くらげ3号。
 得意技は、謀略と世渡り上手。
 
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない