第24回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉
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染まる香りと音と色
ぱぴこ
投稿時刻 : 2014.12.13 22:54 最終更新 : 2014.12.13 23:19
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- 2014/12/13 23:19:26
- 2014/12/13 22:54:16
ぱぴこ


 いただきもののアロマキンドルを焚いた。ほのかに鼻孔をくすぐる甘い香りが、なんとなくでも気分を落ち着かせてくれたらいい。薄暗い部屋に転がるビール缶を蹴飛ばして、ゆらゆらと揺れる影をぼんやりと眺めていた。
 あんなにあたストクのお薬はもうない。もう少し朦朧とした意識で予知夢気取りの惰眠を貪りたかたが、もうそれも叶わない。全部自分が悪いことはわかていても、まだ欲しいとおもうこの欲にだけはいつも勝てないでいた。ほんとうにつまらない女だと心からおもう。酩酊して、ふらふらとSNSにくだらないことを書き込んで、いつの間にか寝落ちている。そんな生活をどれだけ繰り返したら真人間になれるのだろうと真剣に考える。
 キンドルはそこそこの大きさなのでまだ消える気配もない。つけぱなしにしてこのどうでもいい気分に酔おうじないか。気持ちがいいわけでもない。楽しいわけでも、まして高揚なぞしてるはずもない。適当に垂れ流す音楽だけがこの空間に彩りを与えていて、なんにもない部屋なんだな、とベドだけがやけに大きく感じるこの部屋を見渡す。狭いワンルームのアパートでおもうことは、それでもわたしには持て余しているということだけだ。テレビはとうの昔に捨てた。パソコンさえあればもうなんだてできる。モニターの薄明かりが、ここが自分の居場所なんだと物語ているようで、ただぽちぽちと生存報告をしているだけなのかもしれないとふとおもた。

 仕事の帰り道、少し寄り道をした先に花屋があるのを見つけた。わたしはあの殺風景な部屋を思い出し、一輪挿しくらいなら、と店に立ち寄てみた。そこはほんとうに色とりどりで、植物に明るくないわたしには知らない花ばかりが並んでいた。しばらく眺めていたが、どれもこれも目移りする。目新しいものを見ているのは意外に楽しいことをわたしは知た。
「いかがいたしましう」と店員の女性に声をかけられ、そんな頃には、もう「これを一本」なんて言える空気じないことを悟てしまた。
「じ……2000円くらいの、小さなミニブーケを適当に見繕てください」
「お色はいかがいたしましう?」
「お任せします、全部」
 店員はてきぱきと金額に見合た花束をあつらえてくれていた。ぼうと眺めているのも数分だたようにおもう。「お客様、オレンジが似合うような気がしましたので、それで」と黄色めの多い花を集めてくれていた。最後にかすみ草を添えて、茎を短く切り、大げさでなくほんとうに小さな花束の完成である。花瓶に移すときの扱いも聞いて、店を出た。
「オレンジ……ねえ」
 寒さの厳しくなてきた灰色の街に、ミニブーケを携えて帰路につく。きと帰る頃には黄色めの洋服に思いを馳せるに違いない。そんな服、ワードローブにあたかな、なんてね。

 玄関を開けると早速花瓶になりそうなものを探した。なんせ小さな花達なので、少し大きめのマグカプでも充分そうである。流水につけながら茎を更に短く切り、自分らしく、でもせめて少しでも可愛らしく活けてみた。
 今夜はお薬もなく、お酒もなく、ただキンドルとこの小さな花達と一緒に過ごそうではないか。女子力てやつはここにもあるのかもしれない。そして、健全な人間になるためにも、きと。
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